「そして誰もいなくなった」はイギリスの推理作家の大家、アガサ・クリスティさんが1939年に刊行した長編小説です。
あらすじとしては、デボン州沖の小さな孤島に、謎のオーエン夫妻なる人物から招待状を受け取った8人が集まるのだが、そこに執事夫妻はいるものの、当のオーエン夫妻はおらず、その閉ざされた孤島で殺人が起こり、そこにいる10人は疑心暗鬼の中、見えない殺人者の正体を推理していく・・・
といういわゆるクローズド・サークルの代表作的な作品です。
本作は世界的に人気かつ有名で、ナンバーワンミステリ―作品にあげられることも多く、本作の名前を聞いたことがない人はあまりいないのではないかと思います。
私自身本作の事は知っていましたし、面白いとおすすめされたこともありました。
しかし「とはいえ古典だよなあ」という感覚が拭えなく、いつかは読もうと思っていたものの、他の作品を優先し後回しにしていました。
しかし昨年、私は「九尾の猫」からエラリイ・クイーン作品にドはまり!
その時に
「あれ、ミステリーの古典って、現代レベルでも充分に面白い。というか現代が失った何かがあるのでは?」
と思い、書店で本作を購入。そして買ってからあっという間に読了しました。
読んでみて、まずとにかく面白かったし、何でこの作品が多くの人から賞賛されているのかが腑に落ちました。
本作は、童謡「十人の小さな兵隊さん」をモチーフに徐々に登場人物が殺されていく、という見立て殺人ものというのが主軸にありますが、とかく主要人物それぞれに作品における役割が当てはめられており、それが面白く、なおかつ読みやすいのです。
また物語は淡々かつリニアに進み、余計な描写が無いので、物語から心が離れずに掴まれたまま、先へ先へと促されます。
本作の大成功の為、本作のようなフォーマットの作品は現代でも増えているように思います。
しかし個人的な感覚ですが、そのどれも本作の境地に至ってないのでは、そのように思います。
本作の分かりやすさエンタメ性、かつ歪んだ正義という答えが安易に出ない問い、そして終盤のサイコホラー的な展開、などなどまさに本作は珠玉というのにふさわしい作品のように思います。
「タイトルは知ってるしなんとなく何が起こるか知ってるしなあ」
そう思っている人も、本作を是非読んで欲しいです。
間違いなく、読んでいて面白く、かつ読了後、自身の中に何かを残してくれるはずです。