<書評>「吹雪」 ウラジミール・ソローキン

雑記

「吹雪」はロシア現代文学のデストロイヤーと評される、ウラジミール・ソローキンさんが2010年に発表した中編作品です。

ソ連のアングラ作家として出発した作者。その出自をいかんなく見せつけられたと感じたのが少し前に読んだ「青い脂」

衝撃的な表現や展開の数々は「現代文学の最前線はこんなとこまで来ているんだなあ」と久しぶりに自分の好奇心の枠を広げてくれるようなワクワク感があり、その流れで長編の「ロマン」を読了。

そしてその徹底的な文学解体の狙いに見事に額を撃ち抜かれ、本作「吹雪」を手に取りました。

↓写真

そんなわけで私の体は、圧倒的な破壊を期待していたのもあって、本作を読了した時、極めて真っ当な幻想文学だったのに対し少し驚いてしまいました。(しかししっかり面白い)

本作のあらすじを紹介します。

どこか19世紀の世界の匂いを漂わせる近未来のロシア。

主人公の医者、ドクトル・ガーリンは、感染した人間をゾンビに変えてしまうという恐ろしい病気から人々を救うために、病気が蔓延している村にワクチンを届けに、視界を覆う吹雪の中を、雇った御者のセキコフと共に旅に出る。

上気がメインのシナリオになります。

しかしその旅は常識ではかれるものではなく、様々な不可思議な事や、欲望の誘惑がドクトルを襲うことになるわけです。

上記にも述べたように私は「ロマン」を直前に読んでいたこともあり、何かしらの圧倒的な破壊を期待していました。

なので最初に読み終わった時は「しっかり文学として成立しているなあ」と若干、肩透かし感があったことも事実です←自分の脳味噌の思い込みが悪い

しかし本作を振り返り噛みしめると、幻想的な景色や、道中の不思議な体験は、深い部分で後を引くような印象が残るようになっており、やはり幻想文学としてかなり面白いなあと感じました。

道中で起こることはロシアの知識人の歪みや欲望、社会の現状をしっかり象徴していますし、主人公が身分意識から抜け出せないのも、前時代の課題を抱え、取り残されている感があり、吹雪の中で彷徨う景色とマッチします。

本作はソローキンさんの中でもかなり読みやすい本だと思うので、「気になるけどあまりどぎついのはちょっと」とか「しっかりと文学性があるモノを読みたい」そう言う人は、本作から入るのもいいのかもなと感じました。

以上が本作の書評です。

以下は、自分が特にお気に入りだった部分についてネタバレ有りで書きますので、ネタバレが嫌な人はここでストップしてください。

魅力深掘り(ネタバレ有り)

やはり本作の魅力はドクトルがとにかく急いでいることです。

しかしです。使命感がありながら欲望の誘惑にはとことん負けていきます。

粉屋の妻と性欲に負けて情事に及ぶし、良く分からない謎のビタミンダーという人々からピラミッド型の麻薬をもらい服用してトリップしたりと、旅は右往左往します。

そのトリップの幻覚で民衆から釜茹でにされる儀式の光景は壮絶であり、ここに文学人や知識人の欺瞞や民衆との乖離といった、ソローキンの文学や知識人に対するアンチテーゼのようなものも深く感じます。

巨人の頭や雪で出来た男根など、ロシアそのものへの象徴的で懐疑的な視線も所々に感じられ、やはり読み終わると、これぞソローキン作品だなという思いにしっかり浸れます。

ラストの中国人に拾われるというシーンも、自分が差別意識を捨てれないままセキコフは死んでしまったのに、そんなロシアよりも経済的に今や上に立ち、おそらくロシアを下に見ているだろう中国人に助けられるという現状のアイロニーに満ちた感じが、吹雪の光景とあいまり、とんでもない寂寥感に包まれます。

これからも他のソローキン作品を読み、彼の目から見たロシアというものについて、つまりは人間という存在についてを紐解きたい、そんなことを思える作品でした。

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