私はしっとりしたバスタオルが苦手です。
お風呂から上がった後に体を拭くとき、パサパサしたバスタオルの方が水分を吸い取っているような気がするし、感触としてもパサパサに慣れ切ってしまっているからです。
逆にホテルとかでしっとりしたバスタオルを使う時こそ、何だか気色の悪い感覚を覚えてしまうのです。
それをあるとき両親に話したところ
「間違ってもそんなこと他人様に言うんじゃありませんよ。恥ずかしいったらありゃしない」
と言われたものの
「パサパサのタオルしか家の中に用意しなかった貴兄らが悪いのではないか」
ということを心の中で毒づいたのも今となってはいい思い出です。
そんなわけで私は、パサパサタオルが擦り切れてきたので新しいタオルを買おうと思う度に(さすがに擦り切れはイヤ)
ドン・キホーテのタオルコーナーで新品のタオルを触りながら、そのしっとりさ加減に肩を落とすという度し難い矛盾的行為を繰り返すことになるわけです。
さすがに
「ちょっと!ここのタオル全部しっとりしてスベスベなんですけど、一体どういう了見なんですか?」
などと店員に文句を言ったとしたら、最近増えてきているヤバい不審者の仲間入りしてしまうことになるので、この悲しみは自分の胸の引き出しの3段目にそっとしまっておくしかないわけです。
しかし私がこうもパサパサタオルを求めるのは両親による英才教育とは別に、自分の身体的特徴も影響していると思われます。
端的にいうと私は「乾燥肌」なのです。それも超ド級の。
そのくせに化粧水を塗ることもせず、パサパサの欲しいままに任せ私は今までの人生を過ごしてきました。
もしかしたら私は自分の肌のパサパサと同じ感覚を無意識にバスタオルにまで求めてるのではないか?
そんなことを思うと自分の意識や無意識などあらゆる深層心理にパサパサの因子が潜んでいる気がして、恐ろしくなります。
しかしここで一旦冷静になりましょう。物事には表だけでなく裏面もあります。
一見すると「パサパサガチ勢」に思える私ですが、クッキーや白米がパサパサであることは言語道断で許せないという一面もあるのです。
というかしっとりしていないクッキーなどは、私の手により握りつぶして、その砂粒となった体を海に流してしまいたいほどです。
このように人間というのは「パサパサ陣営」と「しっとり陣営」を行ったり来たりする矛盾を抱えた生き物だというのが、この一例をもっても分かります。
しかし、世の中というのはどこかで決断しなければならない時が来ます。
私は考えるのです。
もし「パサパサ陣営」と「しっとり陣営」が関ヶ原に陣取り雌雄を決しようとする時、私は果たしてどちらに付くべきなのかということを。
ここでお互いの陣容を確認してみましょう。
まずは「しっとり陣営」です。
大将は言わずと知れた「カントリーマアム」伯爵が務めます。
中将は、「乳液」男爵です。関係無いですが乳液男爵という言葉はなかなか気持ち悪いです。
少将は「フランスの赤ちゃんのお尻」です。なぜフランスなのかは自分でも分かりません。ついでに少将クラスに爵位はありません。
次は「パサパサ陣営」です。
大将はかの有名な「カロリーメイト チーズ味」で爵位は公爵です。
中将は「ゾウの左側面の肌」で、同じく公爵。
少将は「宴会の最後まで残ったかんぴょう巻き」で無爵です。
本来、実力で言えば「ゾウの肌」が大将ですが、相手の大将がお菓子系軍人なので、カロリーメイトにその座を譲った「ゾウの肌」の男気には感嘆を禁じえません。
しかしここまで両軍の陣容を見てきましたが、やはり私は根っからの平和主義者のようです。
無用の戦は避けたいので、両軍に和平を促すのが正解のような気がしてきました。
今回の戦はパサパサ軍の強硬な態度と進軍がもたらしたという側面があるので、いかに彼らの心を癒すかが喫緊の課題であると言えましょう。
そうなると私に出来るのはゾウのパサパサの肌にシルクでしっとりたバスタオルをかけてあげることぐらいです。
最初は抵抗していたゾウですが、一度そのタオルに触ったが最後、そのしっとり感に目だけでなく鼻までうっとり、しんなりしています。
このことから私が学んだのは、戦を止めるのは「互いにバスタオルを掛け合う優しさ」だということです。
そして重要なのはただタオルを掛けるのではなく、相手の事を思い相手に合ったタオルを掛けてあげることでしょう。
例えばハリネズミであるなら、そのハリに邪魔にならないどころかハリすら穴に通してしまうようなメッシュの固めのタオル。
毛を全て刈られた羊であるなら、優しい手つきにより、他の羊から刈り取った羊毛で作ったタオルで包み込んであげましょう。
ただしフクロウにだけはタオルを掛けてやる必要はありません。
フクロウはフクロウ自体がもふもふのバスタオルみたいなもので、バスタオルとは掛けてあげる為の物であり、それ自体がバスタオルみたいなものに与えられるべきものではないのだから・・・
だんだんバスタオル自体が何なのか分からなくなってきたのでここで終わります。(こんな終わり方でごめんでござる)