<書評>「造物主の掟」 生命から流れ出す物語の奔流

書評

「造物主の掟」はイギリスのSF作家、ジェイムズ・P・ホーガンの長編小説です。

ホーガンの代表作といえば「星を継ぐもの」が有名です。

私は大学生の時に「星を継ぐもの」を読み、その壮大かつリアリティーのある世界観、それが見事にラストの驚きに繋がる展開など、本当に面白いと感じたのですが、いかんせん科学用語がとても多く、序盤から中盤までがかなり読むのに手こずった記憶があり、どこかで他の作品を読もうと思いながら、手を付けずにずるずるここまで来てしまったのです。

しかし昨年に、本作の裏の「土星の衛星でロボットたちが、地球の中世のような社会を作り上げていた」という紹介文を読み、「これ絶対俺の好きなやつ!!」と思い、それ以来ずっと気になっていて、年の瀬にようやく購入。そして年明けに読了したわけです。

そんな本作のあらすじ↓

百万年前に、地球外知的生命体の無人宇宙船が土星の衛星タイタンに着陸したのですが、プログラムにバグが生じ、ロボットたちは自己増殖を続け、そして世代を重ねるごとに淘汰や変化をを繰り返しながら進化していきました。

そして21世紀にタイタンに生物がいることを知った地球の宇宙船が、タイタンに到着した時には、ロボット達は地球の中世そっくりの社会を築き上げていたのです。

その宇宙船に乗っていた、怪しい自称心霊術師ザンベンドルフを中心にして、機械生命であるタロイドをアメリカの利益のために利用しようとする勢力との抗争を描いたエンターテインメント作品が本作です。

先程、「星を継ぐもの」について科学用語が難しいという話をしましたが、本作も序盤にはタロイドたちの進化過程が、科学用語を交えて描かれるものの、それ自体がとてもワクワクして面白いですし、中盤から後半にかけては、人間たちやタロイドたちの思惑がからみあった人間物語という側面が大きく、非常に読みやすいです。

というより本作の軸が、詐欺師に近いザンベンドルフが、汚い利権屋に立ち向かっていく、ある種のピカレスクロマンであり、そしてそれが非常に面白いのでページがどんどん進んでいきます。

こういう小説において重要なのがキャラクターの魅力というやつだと思いますが、その点も本作は余裕でK点を超えてます。

もう主役のザンベンドルフが本当に魅力的なのです。

詐欺師でありながら人間社会の本質を付いている視線が、タロイドとの深い交流を可能にしている描写や、ニヒリズム的でありながら実は暖かい人間性などなど、本作を読んでいるうちに自分もチーム・ザンベンドルフの一員に入ったような気がしてきます。

その意味で本作はハードSFが苦手という人でも、物語として楽しく読み進めていける作品だと思うので、「星を継ぐもの」よりもホーガンの入門としていいかもしれません。

本作には続編の「造物主の選択」という作品もあるようなので、今年中には読みたいと思ってます。

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