マグロの解体ショーが見たい!!
私は今までの人生においてこの魚介界隈の一番ホットなイベントを経験せずに生きてきました。
食べ物の中でも寿司や刺身が個人的に上位に入る上に、その中でもトップの地位に座り続けているマグロ氏。
そんなマグロを新鮮な状態で、目の前で調理して食すことが出来るこのイベント!
しかし悲しいかな、私はこのイベントを全く経験しない、言うなれば「解体童貞」のまま成人を迎え今に至っています。
私がこのイベントにこだわる理由は、マグロが美味しいというのもあるんですが、もう一つ大きな理由として、「解体」というものに尋常ならざる興味を抱いているという点があります。
とにかく色んなものを解体したい。
あれは小学校高学年の夏休みのこと。
友達が新しい自転車を買ったというので、見に行ったのです。
そこには得意げな友人の日に焼けた顔と、新品の青くメタリックな光を放っている自転車が周囲から浮き出る様なオーラを放ち鎮座していました。
しかし私は、自転車のパーソナル情報を次々と披露する友人の言葉は上の空でずっと
「この自転車解体したいなあ」
と思っていたのです。
しかし、そこで
「もしよければ、この自転車を解体させてもらうことは可能でしょうか」
なんて発言をしたら完全にサイコパス野郎だと思われてしまうため、泣く泣く言葉を飲み込んだのです。
何で、私が色んなものを解体したいのかを最近になって真剣に考えたのですが(考えるのが遅い)
この世にドシンと構えて、テレビとか自転車みたいな固有名詞を偉そうに名乗り
「私は生まれてからこれからもずーっと自転車ですけど」
みたいなツラしているヤツらを解体して、部品の積み重ねに過ぎない己を突きつけてやることに快感を感じてるのではないかということに気付いたのです。(かなりヤバいやつだ)
あとやっぱり、全ての物が何かの組み合わせで出来ているという実感を感じれれるというのもあるんだろうなあと思うのです。
自転車の他にも色んなものを私は解体したいのです。
妹が持っていた大きなクマのぬいぐるみ。
あれも解体したかったなあー。
まあ、まさか兄がぬいぐるみを解体したいという思いを秘めていたとは、彼女は今でも夢にも思っていないでしょうが、私はずーっとクマを解体したいと思って見つめていたわけです。
もし、もしもです、丁寧に関節を切り取っていったとき、中から綿ではなく、しわしわのクルミが出てきたり、「厭離穢土欣求浄土」と書かれた紙が出てきた場合。
クマのぬいぐるみを構成する主成分は、綿や布でなく、自然の恵みや思想であるということになりかねないのです。
さらに規模を大きくするなら、電車や飛行機なんかも、是非解体したいところ。
東京ドームくらいある大草原に、解体された部品たちが、陸に打ち上げられたクジラのように並ぶさまは圧巻でしょう。
そして出来るならそこで、解体された部品のフリーマーケットを開催するのがおススメです。
きっとリビングの壁や、テーブルに置きたいと思える様な、元電車部品、現お洒落雑貨みたいなものを求め、県外からも人が殺到することは間違いありません。
もし部品が余ったら、その余った部品でもう一回、電車や飛行機を組み立てればいいんです。
「あれ?元ある部品の半分くらいで電車が出来ちゃったぞ」
「しかもちゃんと走るぞ、ラッキー」
こうなったら、エコもSDGsも実践できて、地球がハッピーです。
さてこうなってくると、とうとう「例のアイツ」を解体するしかありません。
そう「太陽の塔」です。
ボウリングのピンのような胴体に、巨大な顔がはめ込められ、羽のような両手を左右に伸ばしてるアイツ。
私は子供のころから感じていました。
あのルックスはどう考えても人類及び地球に立ちふさがるラスボスの最終形態だと。
あれはつまり来るべき人類とラスボスとの最終決戦に向けて、岡本太郎が残してくれた敵の設計図に違いありません。
ここにおいて人類は太陽の塔を解体する責務があるのです。
顔の部分、右手、左手と解体した時、左手の中にだけ奇妙な黒い粘土のようなネバネバしたものが詰まっているんじゃないかと私は睨んでいます。
そしてそれは闇の根源「ダークマター」を表現したものなのです。
すなわちもし宇宙からラスボスが襲来した時は、左手こそが本体であるという太郎さんからのヒントに違いないのです。
素人はうっかり胴体に付いている顔の部分が本体だと思いがちですが、疑わしいところには何もないのがこの世の真理ということを忘れてはいけないでしょう。
さて、太陽の塔解体により外敵を退けても、まだ最大の問題が残されています。
我々は最後の解体に取り掛からねばなりません。
そう「アンパンマン」の解体です。
あれはどう考えてもおかしい。
「アンパンマン新しい顔だよ!」
というキャッチ―なフレーズに皆騙されているようですが、あのシステムは物理世界の法則を捻じ曲げています。
顔が脱着可能で、しかもアンパンを作れば無限に代替が出来る。
そして顔を付けてすぐにしゃべり出すことが出来る高性能な構造。
こんなに恐ろしい存在をいまだかつて私は知りません。
普通の生物の頭には脳味噌があり、そこの電気信号が指令塔として働いています。
しかしアンパンマンに関していえば、胴体の方にこそ脳や核が存在していることは疑いようがありません。
そして、新しいアンパンが首の部分に付いた瞬間、無数の神経が絡まった触手がアンパンの内部と接合しアンパンの部分の口や目、表情などが出せるようになるのだと思います。
ここまで見てきて気付きませんか?
そう実はアンパンマンの頭はアンパンでなくてもいいことに。
上にアンモナイトの化石を乗っけようが、電子レンジを乗っけようが成立してしまうのです。
そう考えると、我々は恐ろしい危機の最中にいます。
考えてみてください。
もし胴体の上に、スーパーコンピューターを載せた場合、その旧アンパンマン及び現スパコンマンは人類に対し牙を剥かないと誰が言いきれるでしょうか?
さらにいうなら、胴体が首の部分に人間の赤ちゃんを載せた場合、それは人間が直接アンパンマンに吞み込まれることを意味します。
アンパンマンに恨みはないですが、危険は放置するわけにはいきません。
我々には太陽の塔を解体し、人類を救う知恵を得た経験があります。
ここは我々の為に解体させていただくほかはなさそうです。
<アンパンマン解体作戦記 国防省秘密指定文書>
2032年1月7日:山梨県山中で、逃亡中のアンパンマンを発見、捕獲に成功
2月3日:取り調べにおいて口を割らないアンパンマン
4月4日:内閣から強制解体命令が正式に発令される
5月8日:アンパンマンから「お前らはパンドラの箱を開けたのだ」という発言が飛び出す、そのまま研究所に運ばれる
現在、6月6日。
私は今、解体の現場に向き合っている。
一か月の入念な準備を終えて、アンパンマンに向かい合う研究所のメンバーたち。
アンパンマンは先ほど濃いカスタードクリームを注射され、意識を完全に奪われている。
首の部分からいよいよ中の解体に入ろうとしたその時。
幾重にも折り重なった、ぬめぬめとした鋼鉄の触手たちが、首から勢いよく飛び出し研究所のメンバーを吞み込んだ。
人体を呑み込み、どんどん成長する触手。
私は必死で施設を逃げ出すが、触手は施設を呑み込み、ふもとの都市をも全て呑み込んでいく。
空はぬめぬめした触手で覆われ、大地に襲いかかってきた。
その触手は私の下半身を呑み込んだ。
混濁する意識の中で私が最後に見たのは、地球を覆い全てを吞み込んでいく雄々しき龍の姿だった。
(お・し・ま・い)