聖夜-13

 サンタに別れを告げ、少年が再び誰もいない家の中に戻ると、さっきまでとは打って変わった、性質の違う嘘のような静けさがそこに佇んでいた。

「あっ、サンタさんにメリークリスマスって、僕一度も言わなかったかも」

 少しチクッとするような後悔を左胸あたりに感じつつ、少年は辺りを見回す。

 そこにはあちこちに積まれたごみ袋、乱雑に置かれたポテトチップス等の、食べかけの袋があるだけである。

 食卓の昆虫図鑑も、開いていたページを閉ざし、擦り切れて色が薄くなった表紙を上に向け、時間が止まった額縁のように、夜の闇の中で能面のように横たわっていた。

 カーテンの隙間から、わずかな月の光が誰もいない部屋の床を照らしている。

 音といえば、外からわずかに聞こえる枯葉のこすれたような音くらいで、この空間がいま海底にあるのだと言われれば、簡単に信じてしまうなあとすら思う。

 そして夜の海底に封印された寂しい部屋は、饐えた残飯の匂いがするのだ。

 少年はその匂いに包まれながら、椅子の上で体を丸め込むようにして、そっと目を閉じた。

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