<書評>「異能機関」 背骨がしっかりしている王道は強い

書評

よっ、スティーヴン・キング初体験!!

世の中の人間にはキング作品を読んだことがある人間と、そうでない人間に分かれる・・・

これは言わずと知れた世の真理であり摂理←全部のことがそだよねー

私は30年以上生きてきて、驚くことに映画も本も含め、キング作品に触れたことがありませんでした。

節目節目で見なくてはと思うものの、「何となく先送り」という、私の十八番中の十八番であり、もはやそれは速達の速度を上回る程の配達力を持つ、怠惰のバロック的積み重ねにより、今まで私はノーキングライフを送ってきてしまったわけです。

しかし今回、本屋にて大々的に平積みされていた本作の、ぞくぞくするようなオカルティックかつジュブナイルテイストの表紙と、超能力研究所からの脱出劇というあらすじを見て、ハードカバー本でありながら、一気に一目ぼれし見事に購入←心が動くと早いタイプ

楽しく本作を読了しました。

本作は、アメリカの作家であり、「ホラーの帝王」の名をほしいままにするスティーヴン・キングさんが2019年に刊行した長編小説であり、日本では2023年の6月に発売されました。

本作を読了した感想。それは「しっかりしたエンタメ映画を1本見たなあ!」というもの。やっぱり王道というのは魅力があるから王道なわけで、しっかりと面白い。

あらすじとしては、超能力の資質を持つ子供を集め、子供を消耗品のように扱い、悪いことをさせる研究所からの脱出劇と、その研究所勢力との戦いの話でございます。

内容的にはスリリングかつアクションもあり、また非常に映画的で視覚的なシーンもあるという、子供から大人までしっかり楽しめる作品に仕上がっているのであります。

キャラクターもしっかりと立っており、主人公である天才少年ルーク、残忍な研究所の女統括官であるシグスビー、わけあって警察を退職し、小さな町で夜まわり番をすることになったティムなど、それぞれ事情を抱えたキャラクターが物語でクロスし、着々としっかりストーリーは進んでいくわけで、ワクワクした気持ちを維持したまま、安心してページをめくり続ける事が出来る次第です。

本作の大きな特徴としては、ルークから物語が始まるのではなく、42歳のティムが飛行機のトラブルから搭乗予定の飛行機を降り、流れるようにデュプレイという町に流れ着くというところからスタートすることです。

私はこのティムというキャラクターに、作者であるキングが一番乗っていると思うのですが、そう思うと本作のスタートは、ある種の運命のきまぐれにより物語をスタートさせることになった、というような、物語の神が下りてくる瞬間を描いたのではとも思います。

本作がただのエンタメ作品と違うのは、そのティムを中心に、しっかりとした大人がいるということです。

陰謀論や都合の良いデータに惑わされず、自分の頭でしっかり考え、それでいてデータから光の側面を導き出すこと。

そういうある種の背骨の哲学が見える、真っ当でかつ面白い作品なのです。

もちろん都合の良い展開だけではなく、本作はむしろしっかりと犠牲が出ます。それでもその奥にあるメッセージや哲学に芯があるからこそ、読んだ後、非常に朗らかな気持ちになり、良い本を読んだなあと心から思うことが出来たのでした。

これを皮切りにキング作品を開拓していこう、そんな風に思わせてくれる楽しくて素敵な作品でありました。

何だかよくわからないモノを目指し、ブログやってます
本の書評や考察・日々感じたこと・ショートストーリーを書いてるので、良かったら見て下さい♪

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