<かえる劇場>運命の選択

かえる劇場

何だかよく分からない不条理でアホなショートストーリー。

それが「かえる劇場」です。

気楽に見て下さい♪

運命の選択

男

・・・・・はっ!!
ここはどこだ?

女

目覚めたようね

男

あれ、今日は君とデートの約束をしていたはずだけど・・・
そういえば、昨日ベッドに入ってから記憶がない・・・

女

そうなのよ
私も目が覚めたらここにいたわ

男

・・・一面、真っ白だね
奥の方にドアが見える

女

・・・ええ

あと中央に何か布をかぶせられたモニュメントみたいのがあるわ

男

てくてく・・・
本当だね、何だろうこれ

女

布を取ってみるわね

男

うん、少し怖いけど気になるしね

女

えいっ

男

!!!
うわっ四角い台座に爆弾が付いている!!

女

タイマーがあと3分を切っているわ

男

そして爆弾から、赤と青の線が出ている・・・

女

あれ、台座の上に黒い封筒があるわ

中に手紙とハサミが入っている

男

「赤と青の線どちらかを切れ」か
まさか映画みたいなシーンに人生で出くわすとは思わなかったな

女

どうする?

そうこう言ってるうちにあと1分を切ったわ

男

・・・仕方ない

もう直観でいこう
君の好きな色は何だい

女

えっ、私が選択するの?

もし爆発したらと思うととても怖いわ

男

そうか、分かった

そしたら僕が好きな色で切るよ

女

ごめんね

ありがとう、これで爆発しても私平気よ

それなりに楽しい人生だったもの

男

僕も君と出会えてよかった!
じゃあ行くよ!!えいっ!!

女

・・・・っ

男

・・・・止まったみたいだね

女

ふう、良かったわ

男

ほっとしたね

あれっ、何かカチッていう音がしたね

女

もしかしたら、奥のドアが開いたんじゃない

男

そうかもね
・・・・・本当だロックが解除されてるみたいだね

女

それなら一刻も早く外にでましょう

男

そうだね

女

・・・・・
また四角くて白い部屋だわ

男

今度も中央にモニュメントと爆弾があるね

女

本当ね

男

そして、コードが32個ある、そして何か全部青いんだけど!!

女

プルシャンブル―
セルリアンブルー
ピーコックブルー
ラピスラズリ
ウルトラマリンブルー
フォゲットミーノット

男

何かいきなり呪文みたいの唱えだした

女

呪文じゃないわ、様々な青の種類の名称よ
冗談は休み休み言ってね

男

全然、冗談を言ったつもりはなかったんだけど・・・
ていうか何?ピーコック?

女

ピーコックブルーは、濃い青緑で孔雀の羽みたいな色のことよ

男

めちゃくちゃ青にくわしいね

女

常識よ、バイリンガルだからって

日本に疎いと思ったら大間違いなんだから

男

いや、君は日本語しか喋れないし、純粋に浅草生まれの両親のもとに生まれた江戸っ子だから
そして、青の知識イコール日本の知識では全然ないからね

女

手紙が入ってるわね

男

うん、全然聞いてないよね

女

「初デートの待ち合わせなのに、昼の2時と夜の2時を間違えて大遅刻
深夜の町には彼どころか、人っ子一人居なかったわ」
の時の気持ちの色のコードを切れ

男

・・・想像の遥か上空の内容の手紙だね

女

うーん、かなり悲しい気持ちだから、アイアンかしら、しかしプルシャンも捨てがたいわね

男

何かジャケット選んでるみたいだね

女

違うわよ

私たちの運命を選択してるのよ
冗談は休み休み言ってよね

男

・・・全然わかんないから君に任せるよ

女

えっ、私が選択するの?

もし爆発したらと思うととても怖いわ

男

怖い感情は健在なのかい!

まあいいや、僕が一番暗くてそれっぽいのを選ぶよ
・・・これはどうだろう

女

ミッドナイトブルーね

男

すごい、何かそのままの名前だね

逆に不安だけど、わかんないしこれで行こう

えいっ!!

女

・・・・・
爆弾が止まってるわ

男

ふう、良かった

しかし、また奥にドアがあるね・・

女

・・・
そしてまた同じ四角い白い部屋だわ

男

一体あと何部屋あるんだ!

女

あれっ、今回のモニュメント何か形が変ね

男

んっ、本当だ

これはマネキンだね

女

そして、マネキンの髪の毛が、よく見ると細かいコードになってるわね

男

えっ、本当だ!!
完全に髪の毛だと思ったよ

ていうか、この中から1本選ぶなんて不可能だよ

女

手紙があるから読むわ

「このハサミで、メンズのトレンドヘア、ウルフマッシュにしろ」

男

想像の概念をひっくり返す内容に驚きを禁じえません

女

優しい印象を与えるマッシュに、ちょうどいいレイヤーとちょっと長めの襟足をプラスしたヘアスタイルで、個性的になりすぎずに、爽やかな雰囲気が出るから、いいヘアスタイルよね

男

めちゃくちゃ詳しいな!さっきの青といい知識量が異常だよ

女

私を一人っ子だと思って侮らないで
私の両親は代々、美容室をやってるのよ

男

うん、君の家は有名な魚屋で、あなたはそこの三女だよね

ちょくちょく嘘つくのはなんでなの

女

ハサミを持ってみたわ

男

うん、まじで全然話聞かないよねー

女

・・・無理だわ

私が切って爆発すると思ったら、怖いわ

男

恐怖心だけは人一倍だよね・・・
まあ今回も僕がやるよ
学生時代、図工は得意だったから

女

ありがとう

男

しかし、どうしよう
ウルフマッシュかあ

女

ちょっと待って
はい、これ

男

うおっ、すごいYoutubeに「ウルフマッシュのカットの手順」の動画が上がってる

女

私、失敗しないので

男

いや、切るの僕だから、君は動画を見せてるだけだからね

女

時間が迫ってるわ

男

やはり話は聞かないスタイルだ

どれどれ、試行錯誤でやるしかないか・・・

・・・・・

男

出来た

女

形上はそれっぽく見えるわね

・・・・・ブッブー・・・・
・・・・・・・・・・・・・

・・・・・ピコピコン

男

びっくりしたあ

最初のブザーでダメかと思ったよ

女

審査がかなり割れたみたいね

しかし、間一髪で救われたわ

男

・・・はあ、そしてまたドアだ

そしてまた同じ部屋

女

モニュメントの上に、爆弾とスマホが繋がってるわね

男

あれっ、これ僕のスマホだぞ

女

あらあらそうなのね

それでは手紙読むわね

男

あのー、もう少し驚きを分かち合ってくれませんかね

女

「あいつ会話中に、たまに空中見てるからキモいんだよなあ」
と言ってる友人10人を推測し、その10人の連絡先を切れ

男

何か、もうあんまり驚かなくなってきたなあ

女

ひどいわ!
会話中、視線が違う次元をさまようのは、あなたの素敵な唯一の個性なのに!

男

君が感じてる僕の魅力そこだっだんだ、しかも唯一かい
でも、これは何となく誰が言ってるのか目星がつくなあ

えーと、ピッピッピッ

女

ものすごい早さで友人が切られていくわね

男

ていうかそもそも連絡帳に11人しかいないからね

女

・・・残った一人を大事にしていきましょう

男

あれ、何か涙が出てきたかも

ピコピコン

女

満場一致、迷うことなき合格ね

早く次に行きましょう

男

・・・気持ちを切り替えよう

女

今回は、3枚のカードと、中央にマイクセットがあるわね

男

手紙を読むね
「パパ活」「デフレ」「野党が弱い」

この3つのうち、一つのテーマを舌鋒鋭く切れ!

女

・・・なるほど時事問題ね

男

しかし僕は、こういうの弱いんだよなあ

女

私もなのよ
小選挙区制なのに、離合集散を繰り返し、そして一つにまとまろうともせずに、選挙の準備も直前になるまでしない、だからみんなダメだって分かってるのに与党が勝つってことぐらいしか分からないわ

男

めちゃくちゃ自分の意見持ってるじゃん!

女

そうかしら

男

それをそのままマイクに言いなよ

女

ダメだわ
私の脳が作り出した意見で、爆発が起きると思うと耐えられない

怖いわ・・・

男

普段の言動と恐怖心のバランスがおかしいんだよなあ
まあいいよ、僕が君の意見をマイクで言うから、メモを作ってくれるかい

女

ありがとう

男

えー、コホン

「わたくしが考えますに、野党の問題は・・・うんたらかんたら」
・・・こんな感じかな

ピコピコン

男

おっ、なんとか合格だ

女

良かった

手元のメモを見ながらマイクに喋る姿が、官僚のメモを見ながらしか答弁できない政治家っぽくて、素敵だったわ!

男

うん、絶対ほめてないよね

無理に何か言わなくて大丈夫だから

女

さて、どんどん行きまっしょー!!

男

何かテンションがおかしくなっている・・・

女

おっ、今度の部屋は・・・
何かがベッドの上に寝そべってるわ

男

あれ、このひげもじゃの顔・・・
・・・どこかで

女

あっ!!
この人、アラブの石油王だわ

男

本当だ!
これはアラブの石油王だね

女

しかし名前が全く思い出せないわ

男

まあ、石油王なんて、個人名なんてないようなもんなんだから
石油王でいいんじゃない

女

あっ、ベッドに手紙が・・
「このメスで、華麗なるオペを見せよ」

男

もう驚きはしないけど、不可能だよね

女

確かに腹部が開いていて、中に色んなコードが詰まってるわね

男

この人が人間なのか、ロボットなのかすらわかんないね

女

この人は石油王よ、それ以上でも以下でもないわ

男

それはそうだね
しかしどうしたもんかなあ

女

じーっ

大変だわ!
これは冠動脈バイパス手術が必要よ!

男

・・・何だって?

女

心臓に酸素と栄養分を運ぶ冠動脈が詰まって血液がちゃんと流れなくなってしまっているから、その状態を、血行が維持できるよう改善しなくてはならないのよ

男

君は一体プライベートの時間に何をしてるんだね?

女

私の両親は昔、大学病院で・・・

男

はい!もういいです!
魚屋の三女は黙ってください
しかし今回ばかりは僕にもどうにもできんなあ

女

これを見て

男

ん?何々

「簡単に出来る冠動脈バイパス手術の手順」

女

Youtubeに動画が上がっていたわ

男

・・・その動画をアップした医師の狙いを教えて欲しいよね

女

再生回数は2回ね

男

その医者と僕たちしか見てないってことだろね

女

私勉強になったわ、再生数だけがすべてじゃないのね

男

ちょっと僕とは学びの方向が違うなあ
しかし、これは大変だ・・・

女

とりあえずメスを持ってみたわ

男

どうせ怖いんだからぼ・・

女

だめだわ!
私の手によって人命と、爆発がかかってると思うと
とても怖いわ・・・

男

その怖がるくだり、絶対やらなきゃダメみたいなルールあるの

僕のセリフを食ってまで、入ってきたけど

女

・・・私怖い

男

いやもう今まで全部僕がやってきたから、今回も僕がやるけどね
ていうかもういちいち道具持つのやめて欲しいわ

女

・・・スッ

男

黙って動画を見せるのやめてね
とりあえず何かの反応を返してください

・・・まあいいか、これよりオペを始める

・・・・・・・

・・・・・・・

・・・・・・・

男

どうにか終えたけど、正直手ごたえはない

女

コードをなんとなく、いじくっただけだものね

・・・・・ピコピコン

男

!!!
えっ、成功してたよ!!

女

私、失敗しないので

男

いや君は動画を再生してただけだからね、執刀医は僕だから

女

あら、石油王が立ったわ

ポシュン

男

そして煙の如く消えてしまった・・・

女

いかにも石油王らしい、去り方ね

男

石油王らしいかどうかはわかんないけど、もう次のドアに行こう

女

あれ、何か今までのドアと違うわ

男

重々しいね、模様に龍が象られてるし

女

・・・開けるわよ

男

・・・うん

女

ガチャ・・・
見た所、今までの部屋と一緒ね

男

ああ、中央に巨大なハサミが刺さっている

女

そして、ハサミは二つあるわね

男

・・・おいおい嘘だろ

女

どうしたの

男

君のうなじから巨大なコードが出ている

女

あっ、あなたのうなじからも!

男

ハサミのところに手紙がある
「切られたほうの命が終わる。生き残るのは一人。もし3分以内にどちらも切れなかった場合。この施設が爆発する」

女

・・・・・
私の夢って、ふぐのお刺身を箸でばーってすくって食べることなのよ

男

急にどうしたんだい

女

・・・・それが叶うまで、まだ死ぬわけにはいかないわ!
バッ!!

男

ハサミを構えた!!

本気かい

バッ!!

女

ふっ、あなたもいい構えしてるじゃない

でも勝つのは私よ!

はあああ!!!!

カキン!!

男

やめるんだ!!

キンキンキン!!!!

女

ふっ、甘いわね

そんなんでは、江戸っ子のハサミさばきをしのげないわよ

バババッ

女

何、距離を取った!?

男

ごめん、僕は君と戦うなんて耐えられそうにないよ

ならば、こうするまで

女

自分のコードを切る気?

男

くっ、切れない!!
なんて残酷なんだ
ハサミが自分のコードには届かないようにデザインされている

カランコロンカラン

男

!!
ハサミを捨てた

女

ごめんなさい

私は一時の食欲に負けて、大事なものを失うところだったわ

男

いいんだ
僕のコードを切って君が生き残ってくれ

女

いいえ、もうあと30秒しかないし

ここで一緒に最後をむかえましょう

男

・・・そうだね

僕は君と出会えてよかったよ

女

私もよ、出来れば来世でもまた出会いましょう

3、2、1

バンッ!!!!!





男

・・・あれ

ここは駅前のベンチ

そうか寝てしまったのか

女

お待たせ、待ったー

男

いや、全然だよ

そういえばさっき、うとうとして変な夢みたんだよ

女

えー、私も電車でうとうとして変な夢みたのよ


和やかな駅前の人々の中で、その日全ての人間のうなじにコードが付いたことに気付いた人は誰もいなかった。

そして人類はこれからも気づかないかもしれない、さらに言えば気付かない方が幸せなのかもしれない・・・

<完>

何だかよくわからないモノを目指し、ブログやってます
本の書評や考察・日々感じたこと・ショートストーリーを書いてるので、良かったら見て下さい♪

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