私にはお気に入りのカフェがあります。
そのカフェは、いつも降りる電車が何本も通ってるかなり栄えている駅から、1駅行った駅にあるのですが、その駅がちょうど丘の上にあり、大抵は運動もかねて電車ではなく歩いて丘を登り、そのカフェまで行くのです。
そのカフェはとても見晴らしもよくて、席をゆったりと取っていて、それでいて常にあまり混んでいないというカフェに置ける重要三大要素(私の独断)の全てを満たしている最高の空間なのです。
私はここでブログをアップしたり、読書をしたりしています。
そしてゆったり優雅にカフェ空間を謳歌するのですが(←何かウザい)ブログ作業だったとしたら大体2~3時間で一区切りが着き、読書でもそれくらいで一度集中力が切れます。
この段階で私は無性に体を動かしたくなり、気分転換もかねてカフェを出て、丘の上の駅のロータリーを散歩したり、駅ビルに入っている書店を覗いたり、紅茶専門店を巡ったりします。(←嘘です、お洒落なフリをしました。私の舌は紅茶の味どころかオレンジといよかんの違いすら分かりません)
さてしばらく歩いて体を動かすと脳内がリフレッシュされます。
ここで作業の続きや読書の為に、どこか落ち着ける場所に再度入ることになるわけです。
ここで違うカフェを選ぶときもあるのですが、何せ私のお気に入りにの「推しカフェ」は、三大要素の全てを兼ね備える至高の存在です。
大抵は再びお気に入りのカフェに向かってしまいます。
この時にカフェのレジの子が、私が居た時からシフトが入れ替わっており、私が最初に来たことを知らない子だったら何の問題もありません。
しかし、もしレジの子が私が最初に来た時にカフェの店内に居た子だった時に悲劇の幕が開けます。
「うわあ、あいつさっきまで斜め上をたまに見て口を半開きにしながら、パソコンを打っていたヤツだよ!また来やがったよー、マジウケるー!」
こんなことを思われてると思うと、私の絹ごし豆腐の様な心臓は、醤油をどっぷりかけられたかの如くズキズキ、ひりひりしてきます。
それはお前の被害妄想だ!という方がいるとは思います。
しかし私は自分の中から出てきた、その危険のシグナルの世界観と、それを形にした妄想という思いの結晶も大事にしていきたいのです。(何を言っているのかさっぱりである)
さて、おそろおそるカフェに入り、レジを確認する私。
手前のレジは感じの良い大学生っぽい青年で、この子は私が居た時には居なかったのでセーフです。
しかし奥のレジにいるセミロングの感じの良い20代の女の子・・・
この子は、私が最初に来た時、カフェの席をダスターで拭いて回っていたのを明確に私の脳は記憶していました。
緊急事態だ!!
急いでカフェを出て、施設のトイレに逃げ込む私。
この事態を打開すべく「脳内円卓会議」(エヴァのゼーレみたいな感じ)を開催します。
議長「さて、諸君に集まってもらったのは、カフェ再来の危機に対する対処法を話し合うためである。諸君らの忌憚の無い意見を伺いたい。」
A「そんなことよりも、コアラのマーチのコアラたちをビスケット生地から解放することが人類の急務だ!」
B「愚かな!それよりも洗濯機と乾燥機の30年戦争の講和条約締結を優先すべきだろう」
C「そんなことより、ワシは焼うどんなんてものは認めんぞ!あれはうどんではない何かじゃ!」
私は脳内で開催された何の生産性も無い会議の面々を叩き潰し、精神から追い出しました。
しかし地面に足を付けてしっかり考えたとて、何らいいアイデアが浮かびません。
例えば、リュックに入っているジャケットを羽織って、声を低くして
「お嬢さん、熱いコーヒーを一杯くれるかね」
と言ったところで、それは感じの良い老人紳士にはなりえず、そこに居るのはただただ声を低くした何かキモイ私です。
仕方なく、何の成す術も思いつかないまま、私はカフェのレジの列に並びました。
しかし私はここで重大な事実に気付きました。
そうですレジは2台あるのです!
もし青年のレジの方へ行けば、ファーストコンタクト面を演じることが出来て何も思われることなくカフェラテをゲット出来ます。
そしてこのままのペースで行けば、間違いなく青年のレジの方に案内されることになるのは確実な情勢なのです。
「いいぞ!このままのペースだ!まだ慌てる様な時間じゃない!」
私の心の中の仙道(スラムダンクのキャラ)が、私に語りかけます。
しかし何と言うことでしょう!!
唐突に私の二人前のおじいちゃんが青年と雑談を始めたのです。
「おっ、最近見なかったのう、久しぶりだね」
「そうなんです。試験期間だったんです」
「そうか頑張ってるなあ、志望校への推薦は取れそうかね」
「頑張ってるんですけど、まだ何とも言えないですね」
「そうかね、そういえば君と一緒に働いてた・・・(会話は続く)」
いつもなら、ほっこりするような青年と老紳士のトークなわけですが、現在は緊急事態です。
今の私にとってその二人は、「キバから血をしたたらしている鬼の親子」に見えます。
「このままだと私は、カフェ再来の口半開き男という烙印を押されることになってしまう!!神よ!私を救いたまえ!!」
しかしこんな時だけ都合よく神頼みしたところで、そんな願いは聞いてもらえるわけもなく、私の体は流れるようにセミロングの女の子のレジへ導かれました。
「いらっしゃいませ」
覚悟を決めた私は、一語一語しっかりした発音で
「アイスカフェラテを一つください」
と言いました。
するとそのセミロング女子は
「アイスカフェラテですね、かしこまりました」
と私の目をしっかり見て微笑んだのです。
その微笑みには何の邪推も入りこむ余地がないほどの天真爛漫さ、そしてお客さんに対する親しみと敬意で満ち満ちており、その笑顔はヒマワリが太陽の光を反射しこちらに微笑んでいる情景を彷彿とさせました。
アイスカフェラテを受け取り、茫然とした足取りで席に着く私。
そしてその茫然は、悪い茫然ではなく、唐突に光を浴びた時の陶酔感に近い茫然でした。
もちろん「血をしたたらした鬼の二人」は、穏やかな顔をした青年と老人に戻っていたことは言うまでもありません。
さて、今回の雑記はこの体験を踏まえ、こんな言葉で締めたいと思います。
「人の子らよ!!諸君は恐怖や憎しみに目を曇らせてはならない!心が囚われた時は、まわりの人の顔を良く眺めることだ!そこには素晴らしい恩寵が用意されているのだから!」
おしまい(↑海外の本に出てくるような呼びかけをやってみたかったのらー)