最近ことさら寒く、ゆえにか何か鼻水が出てたり、絶妙にやる気がしなかったり(いつも説)と、常に調子が微妙だ。
そんなわけで、私はいよいよ腸活に手を出し始めた。
最近の研究で脳と腸は互いにウィンウィンで関係しており、腸の調子が脳にも影響があることが分かり、腸は第二の脳とも言われているらしい。
そんなわけで私はビフィズス菌やらガゼリ菌やらを体内で飼い始める為に、朝晩ヨーグルトを食べ始めている。
そんなことを何気に親に言ったら
「ふっ」
っと思い切り鼻で笑われた。
衝撃である。私は長い間生きてきて、ここまで華麗に鼻で笑われるという経験をしたことがなかった。
その表情は明らかに嘲笑を裏に隠し「お前如きが何を意識高くほざいているのだ」という感情が鼻から音としてもろにでているそれだ。
私は憤慨したものの、確かにいきなり貧乏でこってりフードをむさぼり、間食を主食ばりに摂取する男がやれ「腸活」だ「ビフィズス菌」だと言ってきたら、しっかり鼻嘲笑してしまうことは道理だ。
とはいえ勘違いしてはいけない、「腸活」や「ビフィズス菌」は何も封建貴族や王族にだけ許された特権ではない、腸活の道は全ての人に開かれているのだ。
しかしとはいえ、この人にはあまり腸活やビフィズス菌が似つかわしくないなあというのは、やはり感情として、どうしても出てきてしまう。
例えば国民的アニメのネコ型ロボットのドラ氏なんかは、あの青い肌を考えると、極端か間違えた腸活をやっている可能性がある。ゆえにもう一度腸活やビフィズス菌と向き合いなおすべきだ。
もしかしたら逆で、青いからこそ腸活が必要な可能性もあるが、もし腸が絶好調になり、水色が肌色になったら、何か魚肉ソーセージみたいな色合いが厳しいので、やはり彼は腸活をしないほうがいいかもしれない。
国民的でいうと、ドラゴンボールの主人公である孫氏も腸活はやめて頂きたい。
その圧倒的強さに憧れるちびっこに
「結局、超サイヤ人も腸内環境には勝てなんだな」
とフリーザやセルや魔人ブウよりもビフィズス菌の方が強いという残酷な真理を突きつける事になってしまうからだ。
真理を知るのは義務教育が終わってからで充分いいだろう。
それから笑点のメンバーが腸活していたら「そんなにプレッシャーなら大喜利なんてしなくていいんだよ」と優しい言葉をかけたくなってしまうから、それもあまりよろしくない。
逆に今すぐ腸活したほうがいいのはトランプとプーチンだろう。
彼らにはすぐにでもビフィズス菌を体内に取り入れ、腸内環境を整え、正常な脳味噌を取り戻して欲しい。
そんなことを思いつつ、マイハウスでヨーグルトをぱくぱくしているわけだが、私はついさっきふいに白と金色の光に包まれ、大いなる存在の啓示を受けるに至った。真理とは予感も予兆もなく、唐突に訪れるものなのだと私は改めて感じている。
光の中、私の事を見下ろすビフィズス神は、私に物語を聞かせる。
それはこの世の始まりを記す腸活神話だ。
世界の始まりの時、この世界は巨大な楕円状の卵だった。
次に太陽が生まれ、その卵を焼き、赤ピンクに染めてしまう。
荒れ果てた卵の中で生まれたのが、ビフィズス神とガゼリ神であり、それこそが「創生の二柱」と言われる最初の神々である。
二柱の神が協力して、卵の中身を整えていき、その際に大地や海、山が生まれる。
そして卵は開かれ、世界が誕生する。
これこそが腸活神話であり、長い間人間が無意識に隠してきた世界の真実なのだ。
真実に気付いた私は、ヨーグルトのパックを水ですすぎ、ごみ箱に入れる。
その後、ゆっくりコーヒーブレイクをしながら、その神話を噛みしめていると、今度は唐突に私の自宅の窓が吹き飛ばされる。
そこからかの孫悟空が入ってくる、そして孫氏は私に向け、あの有名なエネルギー波を放つ。
私はそのエネルギーの中で、真の物語を理解する。
彼は7つの腸を集め、繋ぎ合わせると、ドラゴン状になり、一つ願いが叶うという腸龍(チェンロン)を召喚する為に、その7つの腸のエネルギーを探知するガゼリレーダーを使い、必死に腸を集める旅をしてきたのだ。
そんな彼にサイヤ人も所詮、腸内環境に勝てないと言う事は、その努力に対する最大の冒涜だ。
私は薄れゆく意識と崩れゆく体を実感しながら考える。
きっと今の彼は超サイヤ人、いや真の意味での腸サイヤ人なのだろう。
(おしまい)