<書評>「さよなら、愛しい人」 躍動する物語と哀しい幕切れと

雑記

「さよなら、愛しい人」はアメリカの作家、レイモンド・チャンドラーさんの私立探偵・フィリップ・マーロウを主人公とする小説シリーズの二作目です。

私は村上春樹さんの訳で読んだのですが、清水俊二さんの訳では「さらば愛しき女よ」というタイトルが採用されています。

私は「ロング・グッドバイ」「大いなる眠り」を読み、本作で三作目のフィリップ・マーロウシリーズなのですが、一つのシリーズを読み切るのに数年かかったりする私としては(途中で他の本を読んじゃう)かなりハイペースであり、それだけ本シリーズが魅力的だということです。

↓本作のあらすじ

刑務所から出所したばかりの大男、マロイは、8年前に別れた恋人であるヴェルマを探しに酒場を訪ねます。

そこで酒場の主が何も答えようとしない為、それに逆上したマロイは衝動的に殺人を犯し、逃亡してしまいます。

現場でひょんなことからマロイと飲んでいた、私立探偵フィリップ・マーロウはマロイを探し始めますが、そこにリンゼイ・マリオットという人物から、怪しい護衛の仕事が舞い込みます。

果たしてマーロウはマロイを探し出すこと、その背後にある思惑を暴くことが出来るのか・・・

という物語が本作です。

前に読んだ二作もマーロウの躍動的なフットワークが感じられ、それが魅力的でしたが、本作はよりその躍動感が顕著です。

冒頭から大男でかなりクセが強く、暴力的なマロイという人物に、マーロウと共に読者も巻き込まれることになり、その勢いのまま物語は動いていきます。

特に後半の賭博船のシーンなんかは、まるで映画に自分が入り込んだような緊迫感があります。

そしてそんな躍動感あるシーンをさらに魅力的にしているのが、くせ者揃いのキャラクターたちです。

もちろん大男のマロイなどもそうですが、霊能力者のアムサー、暗黒街で名を馳せているブルーネットなどなど、一度読んだら印象が焼き付くようなキャラが沢山出てきます。

あとがきで訳者の村上春樹さんが、ヒロインポジションのアン・リオーダンに関しては、他のキャラクターが魅力的な分、平面的で現実味を欠いているのではと言っていますが、個人的にはかなり好きなキャラクターでした。

私は小説においてはリアルな人物と同時にある種のデフォルメされたキャラクターというのも必要だと思うタイプなので、色々な事に首を突っ込んじゃう系のヒロインとしてアン・リオーダンは非常に魅力的に映りました。

またマーロウシリーズは、文体やマーロウのキャラクターの部分が評価されることが多いですが、三作読んでみて、共通するのが「終わり方」が全て素晴らしいという事です。

「終わり方」をもう少し解像度を上げて表現すると、「事件の悲しい幕切れ」という言葉が自分の感覚に近いかもしれません。

「ロング・グッドバイ」も「大いなる眠り」も寂しく哀しく、それでいて心の隙間に大事な何かとして常に潜み続けるような後味が本シリーズを一つ高い場所に押し上げているなあと感じます。

引き続きSF小説を読みつつ、マーロウシリーズを読んでいこうと思います。

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