<かえる劇場>地下の仮面

かえる劇場

何だかよく分からない不条理でアホな適当ショートストーリー。

それが「かえる劇場」です。

気楽に見てね♪

地下の仮面

<strong><span class="fz-16px">男</span></strong>

ああ、あまりに退屈で山手線を5周もしてしまった

とはいえそろそろ電車酔いしてきたし駅に下りよう

<strong><span class="fz-16px">男</span></strong>

あれ、適当に下りたら何だか見たことがない駅に着いてしまった

<strong><span class="fz-16px">女</span></strong>

こんにちは

<strong><span class="fz-16px">男</span></strong>

うおっ、いきなりでびっくりした!

こんにちは

<strong><span class="fz-16px">女</span></strong>

あなたは現世に退屈してませんか?

<strong><span class="fz-16px">男</span></strong>

すごいよく分かったね

退屈過ぎてドロドロに溶けそうだよ

<strong><span class="fz-16px">女</span></strong>

それでしたら、これから仮面の地下迷宮にご案内します

<strong><span class="fz-16px">男</span></strong>

仮面の地下迷宮?

<strong><span class="fz-16px">女</span></strong>

ええ、そこのビルの地下に仮面を付けなければ入れない地下の楽園があるんです

<strong><span class="fz-16px">男</span></strong>

うーん、仮面とか地下とか淫靡な響きだなあ

面白そうだし行ってみます

<strong><span class="fz-16px">女</span></strong>

中に入ると皆さんこの仮面を付けています

<strong><span class="fz-16px">男</span></strong>

よく映画の舞踏会とかで見る目元だけ覆うタイプだね

<strong><span class="fz-16px">女</span></strong>

もしあなたが実際見てみて、この地下の迷宮のメンバーになる決心がついたら、この仮面を付けて下さい

<strong><span class="fz-16px">男</span></strong>

分かりました

<strong><span class="fz-16px">女</span></strong>

それでは行きましょう

<strong><span class="fz-16px">男</span></strong>

なかなか長い階段だなあ

<strong><span class="fz-16px">女</span></strong>

迷宮は幾重にも広がっています

<strong><span class="fz-16px">男</span></strong>

おっ、着いたかな真っ黒なドアがある

<strong><span class="fz-16px">女</span></strong>

それではドアを開けましょう

<strong><span class="fz-16px">男</span></strong>

んっ、何か普通っぽい部屋だな

ああっ!!

<strong><span class="fz-16px">女</span></strong>

・・・・・

<strong><span class="fz-16px">男</span></strong>

仮面を付けた子供たちが、何列もの長机を並べて一心不乱に勉強している・・・

<strong><span class="fz-16px">女</span></strong>

仮面夏期講習です

<strong><span class="fz-16px">男</span></strong>

すごい光景だけど、何で仮面をしているのかさっぱり分からない

<strong><span class="fz-16px">女</span></strong>

皆、勉強していることを他人にばれたくないのです

隠れて努力をすることこそ、淫靡な美徳なのです

<strong><span class="fz-16px">男</span></strong>

家で一人で勉強すればいいのに

でも仮面の男女が一堂に会しているわけだから、何かしらのロマンスが生まれそうですね

<strong><span class="fz-16px">女</span></strong>

いえ、このフロアは異性に触れあうこと、喋ることは完全禁止です

<strong><span class="fz-16px">男</span></strong>

今時のアイドルよりも厳しい制限!

<strong><span class="fz-16px">女</span></strong>

さて次のフロアに参りましょう

<strong><span class="fz-16px">男</span></strong>

あっ教室の奥にまたドアがある

<strong><span class="fz-16px">女</span></strong>

ドアを開けます

<strong><span class="fz-16px">男</span></strong>

!!

<strong><span class="fz-16px">女</span></strong>

・・・・・

<strong><span class="fz-16px">男</span></strong>

仮面を付けた男女が、街角にひっそり佇む人気ラーメン店に並んでいる

<strong><span class="fz-16px">女</span></strong>

仮面ラーメン 環七通り二号店です

<strong><span class="fz-16px">男</span></strong>

すごい絵だが、やはり仮面の意味が分からない

<strong><span class="fz-16px">女</span></strong>

食欲という淫靡な本能は仮面で隠すことにより、より浮き上がってきます

<strong><span class="fz-16px">男</span></strong>

それっぽいこと言ってるようで、意味不明だ

<strong><span class="fz-16px">女</span></strong>

とりあえず並びましょうか

-30分後ー

<strong><span class="fz-16px">男</span></strong>

無事に店の中に入りラーメンが出てきた

<strong><span class="fz-16px">女</span></strong>

伸びちゃいますから、早く食べましょう

<strong><span class="fz-16px">男</span></strong>

うん、ラーメンはとても美味しいな

<strong><span class="fz-16px">女</span></strong>

スープも飲み干してください

<strong><span class="fz-16px">男</span></strong>

えっ、まあ美味しいからいいか

飲もう

<strong><span class="fz-16px">女</span></strong>

・・・・・

<strong><span class="fz-16px">男</span></strong>

!!

<strong><span class="fz-16px">男</span></strong>

器の底に、豚骨スープでどろどろになった仮面が出てきた

<strong><span class="fz-16px">女</span></strong>

表層意識というスープを飲み干すことにより、新しい仮面が器から浮かび上がってくるんです

<strong><span class="fz-16px">男</span></strong>

僕は豚骨と仮面のダブルスープのラーメンを食べていたのか

<strong><span class="fz-16px">女</span></strong>

さあさあ、次のドアに行きましょう

<strong><span class="fz-16px">男</span></strong>

全然気持ちの整理が追い付かないけど、行くか・・・

おやここは日本庭園かな

着物姿の仮面の男女が沢山いる

<strong><span class="fz-16px">女</span></strong>

皆さん短冊を持っているでしょう

<strong><span class="fz-16px">男</span></strong>

本当だ

和歌を詠む会なのかしら

<strong><span class="fz-16px">女</span></strong>

中央の着物の女性が一句読みそうですね

<strong><span class="fz-16px">男</span></strong>

ちょっと聞いてみようか

<strong><span class="fz-16px">女</span></strong>

そうですね

ピーピーピー

ピーピーピーピー

ピーピーピー

<strong><span class="fz-16px">男</span></strong>

・・・歌を詠んだ途端に謎のピー音が声をかき消した

<strong><span class="fz-16px">女</span></strong>

これぞ仮面歌会の醍醐味です

<strong><span class="fz-16px">男</span></strong>

次の男性の歌もピー音てかき消されている

<strong><span class="fz-16px">女</span></strong>

その人が読んだ歌は、ピー音という耳の仮面により隠されて誰も聞くことが出来ないのです

想像力が掻き立てられる淫靡な歌会です

<strong><span class="fz-16px">男</span></strong>

・・・短冊をのぞき込んでやる

<strong><span class="fz-16px">女</span></strong>

無駄です

最新の科学技術により、本人が眺める角度以外は光が反射して真っ黒にしか見えません

<strong><span class="fz-16px">男</span></strong>

・・・おや奥の方に神社があるね

!!

<strong><span class="fz-16px">女</span></strong>

・・・・・

<strong><span class="fz-16px">男</span></strong>

フルフェイスマスクのスーツ姿の人たちが、神社の前で物凄い行列を作っている

<strong><span class="fz-16px">女</span></strong>

仮面初詣ですね

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もはや軍隊とか特殊部隊にしか見えない

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顔と姿を隠した何人もの人たちが、神に願いを捧げるわけですが、神は誰の願いだかまるで分かりません

隠された願いをただ聞くだけという輝き、実に淫靡ですね

<strong><span class="fz-16px">男</span></strong>

神様に対する最強のいやがらせだな

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さあ次のドアを開きましょう

<strong><span class="fz-16px">男</span></strong>

・・・ここは普通の部屋の中っぽいな

奥の部屋の長椅子に仮面の男女が座っていて、その前に背広姿の男性が立っている

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仮面不動産説明会です

<strong><span class="fz-16px">男</span></strong>

背広姿の男性の説明に容赦ない罵声が浴びせかけられている

<strong><span class="fz-16px">女</span></strong>

マンションの購入条件や設備の不満に対し、各々が本能のまま怒りを発していますね

仮面を付けると、人は自分がどう見えるかを気にしなくなります

これぞ獣の本性の開放です

<strong><span class="fz-16px">男</span></strong>

・・・もう次のドアに行きましょう

<strong><span class="fz-16px">女</span></strong>

はい、それではどうぞ

<strong><span class="fz-16px">男</span></strong>

あれっ、この赤絨毯が敷かれているシックな廊下はどこかでみたことあるな

<strong><span class="fz-16px">女</span></strong>

ここは国会の中です

<strong><span class="fz-16px">男</span></strong>

あれ、あの部屋は何だろう?

!!

<strong><span class="fz-16px">女</span></strong>

・・・・・

<strong><span class="fz-16px">男</span></strong>

仮面姿の偉そうな男女が椅子に深く腰掛けて、正方形に並んでいる

<strong><span class="fz-16px">女</span></strong>

仮面内閣の仮面閣議です

<strong><span class="fz-16px">男</span></strong>

仮面で政治をして大丈夫なのか

<strong><span class="fz-16px">女</span></strong>

何を言ってるんですか、彼らは官僚が作った書類にハンコを押すだけなのですから、仮面をつけていても誰であろうと何も関係ないのです

そしてたとえ庶民に後ろめたいことがあっても、仮面をしているわけですから良心は傷つかないのです

ある意味彼らが一番淫靡に仮面を使いこなしているかもしれません

<strong><span class="fz-16px">男</span></strong>

・・・・・

<strong><span class="fz-16px">女</span></strong>

さて、これが地下の仮面迷宮です

お気に召しましたか

<strong><span class="fz-16px">男</span></strong>

楽しかったけど仮面はこりごりかな

帰るから外に出してくれ

<strong><span class="fz-16px">女</span></strong>

それは無理ですね

<strong><span class="fz-16px">男</span></strong>

どういうことだ

<strong><span class="fz-16px">女</span></strong>

この手鏡で自分の顔を見て下さい

<strong><span class="fz-16px">男</span></strong>

!!

僕の顔にいつの間に仮面が引っ付いている

<strong><span class="fz-16px">女</span></strong>

・・・・・

<strong><span class="fz-16px">男</span></strong>

えっ、仮面をとってもとっても顔が出てこない

まるで仮面のマトリョーシカだ

<strong><span class="fz-16px">女</span></strong>

本当の顔は二度と出てきませんよ

というよりそもそもあなたに本当の顔なんて無かったのです

<strong><span class="fz-16px">男</span></strong>

何を言ってるんだ

<strong><span class="fz-16px">女</span></strong>

人間の顔なんて、感情や意識の仮面の何層もの積み重ね

本当の顔を持っている人なんて誰も居ないのです

<strong><span class="fz-16px">男</span></strong>

そんなことない僕には僕の顔があったはずだ

<strong><span class="fz-16px">女</span></strong>

なら仮面を取り続けてみなさい

<strong><span class="fz-16px">男</span></strong>

くっ、剥いでも剥いでもまた仮面だ

<strong><span class="fz-16px">女</span></strong>

くっくっく

もう認めてしまったら?

あなたなんてものはただの仮面の積み重ねに過ぎないということを

<strong><span class="fz-16px">男</span></strong>

嫌だ、僕には僕の顔があるはずだ

えいっえいっえいっ

<strong><span class="fz-16px">女</span></strong>

くっくっく

馬鹿な男、それならそこで一生自分の仮面を剥ぎ続ければいいわ

<strong><span class="fz-16px">男</span></strong>

くっ、ダメだ

剥いでも剥いでも仮面ばかりだ

<strong><span class="fz-16px">男</span></strong>

うううっ

誰か助けてくれええええええ

気付いたら僕は電車の中にいた。

どうやら僕は山手線をさらにもう一周してしまったらしい。

しかしさっきの映像は夢にしては、生々しすぎる。

いくら考えても答えが出ないので、僕は色んな表情をしている人たちの波の中を歩きながら家へと帰った。

<完>

何だかよくわからないモノを目指し、ブログやってます
本の書評や考察・日々感じたこと・ショートストーリーを書いてるので、良かったら見て下さい♪

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