「ババヤガの夜」は小説家でありエッセイストの王谷晶さんが書いた短編小説です。
英国推理作家協会が主宰するダガー賞の翻訳部門を受賞し、世界中で絶賛されており、現在本屋でも平積みで大プッシュされている本作。
私も多分に漏れずに、何か面白い本はないかなあと書店をうろうろしている時に、どこかしらバキ風味の荒々しい表紙のデザインと、ババヤガという語感に惹かれ、購入。
こういうジャケ買いは私の経験上、当たり3割、外れ7割くらいの感じなのですが、本作はもう大当たりも大当たり、というか圧倒的な本作のパワーにギラギラしながら読み進め、最後には無事に(?)ノックダウンされる次第になりました。
あらすじとしては
暴力を愛しつつ、アルバイトで生計を立てている主人公の新道依子が、新宿歌舞伎町でヤクザに絡まれ、そこで大暴れをかましているのを、関東屈指の暴力団・内樹會が目を付け、依子を拉致。
そこで内樹會会長の溺愛する一人娘の運転手兼護衛役を半ば強制的に引き受けさせられる事から始める、暴力マシマシのバイオレンスストーリーです。
本作はともかく冒頭から最後まで全てが面白い!!
どんな本にも(特に長編)、ある種の凪のような、静寂や停滞のシーン、あえて分かりやすく言うなら退屈なシーンがあると私は思うのですが(それが悪いわけではない)、本作にそのようなページは一切ありませんでした。
終始、脳が活性化させられ、ページをめくり、その日のうちに、というより買ってからすぐにあっという間に読了。
暴力団やその内紛、制裁が多分に描かれるストーリーなので、残虐なシーンももちろん多いし、暴力の表現も重厚で激しいのですが、なぜだか印象は総じて爽やか。それが本作の痛快さに一役買っている気もします。
また本作に出てくる変態的なキャラクターも非常に良い味を出していて、本作の魅力の裾を広げています。
会長の内樹は、ヤクザ映画のドンのような懐の深さを感じる大物としては描かれず、執着が狂気的なおぞましい怪物ですし、後半で出てくる本作のラスボス(?)的な立ち位置のやつも、ネチネチとした変態でかなりガンギマっています。
また本作の個人的おすすめポイントは、新道依子の豪快な食事シーンです。彼女がまたパワフルに美味そうに飯を食うもんで、私は翌日、完全にインスパイアされカレーに生卵をぶっかけて食べました。(めっちゃ美味かった)
さて色々魅力的な部分を書きましたが、本作の肝はバイオレンスアクションの固定概念を叩きつぶし、その向こうにある新しい景色をこちらに突き付けてくる後半の展開です。
くわしくは読んで欲しいので書きませんが、それは本来相性の良くないテーマ同士を破壊し、混ぜ、顕現させたような圧倒的な物語の奔流です。
ページ数もそこまで多くなく、何より本当に面白く、あっという間に読めてしまうと思うので、本記事を見て、気になったら是非読んでほしいです!!