<雑記>ハワイの話

雑記

私は小学校6年生の頃、ハワイに行った事があります。


確か父が、職場の社内イベントの景品か何かで当てたのだと思うのですが、主に私という存在のせいでとにかく波乱の旅行だった記憶があります。


父と母、私と妹、そして祖母(父の方)で行ったのですが、とにかく初めての外国ということで、テンションが上がりまくりの私。


母親から

「あんた喘息持ってるんだから、あんまり羽目を外しすぎると体調を壊すよ」


と言われたのも右から左へ聞き流し、昼夜問わずホテルのプールや海岸で遊び回っていました。


さて、そんなこんなで夜になりましてホテルでのディナーでのことです。


まずお腹に異変が来ます。


「あれ、何だかお腹の下が変な感じだな」


しかし首を振る私


「いやいや、さっきまで元気だったじゃないか、気のせい気のせい」


しかし、すぐに追うように頭痛のズキズキ感が、大軍を率いて私の脳を包囲、攻撃を開始します。


「うーん、少し疲れたのかな、とりあえず食事を取れば痛みも取れるに違いない」



ところが一向にやまない頭の痛み、そしてとうとう奴らは私の一番弱い呼吸器官も攻め初め、肺が苦しくなり息がぜえぜえしはじめました。


「・・・・・・」



もう認めざるを得ませんでした。


「私はハワイではしゃぎすぎて体調を崩した迷惑なヤツ」すなわちその人に今成り下がったのです。



おそるおそる母に


「あのー、体調が悪いんですけど」


という私。


さっ、と顔色が変わり私の頭に手を当て溜息をつく母。


「もう、だから言ったのに」



ここにきて私は母と一緒にディナーを切り上げホテルの病室に戻り、ホテルの人が電話してくれたお医者さんを待つことになりました。


待ってる間も、ぜんそくのぜえぜえ頭痛のずきずき心臓のばくばくは一向にやまず、さらに日中のプールで体力をほとんど使い果たしてるため、ベッドに仰向けにゾンビのように横たわっている私。


しかし、さすが観光に力を入れてるハワイ、あまり待たされることもなく、すぐにお医者さんがホテルに来てくれました。


診断が終わると、やはりはしゃぎすぎて風邪を引いてしまい、そこにぜんそくが乗っかった為、今みたいな状態になったとのこと。


とりあえず喘息の薬は常備薬と吸入があるので、お医者さんは風邪に効く薬を処方してくれました。



お医者さんを見送った後、すぐに薬を飲む私。

すると頭の痛さが徐々にですが収まっていき、呼吸も楽になってきました。



そして楽になったタイミングで他の家族もディナーを終え部屋に帰ってきます。



まだ時間的には少し早いものの、私は一人だけ大事を取りベッドで早めに休むことにしました。


しかし、ここからが私の恐怖の夜の始まりでした。



頭の痛みは引き、呼吸は楽になったものの、熱はまだ引きません。


そして頭が熱いのと同時並行で、頭が急速にぼーーーっとしてきます。

ベッドに横になると気持ちが悪いので、背もたれに上半身を預けるかたちでベッドに座る私。


しかし意識がどんどんと朦朧としていきます。


後から聞くところによると、外国の薬がとても強くて、それが私の体や脳に影響を及ぼしてたとのことなのですが、そのときの私はそんなことは分かりません。


そしてとうとうホテルの壁に、青い光と緑の光が交互に現れて消えたりする奇妙なパレードが見え始めました。

その光の上で、黒い影の小人がダンスを踊っています。


そうです、私はここにきて人生で初めての幻影トリップを体験したのです。


幻影の奇妙な世界はエンドレスに続き、混迷のカーニバルを上演し続けるわけですが、不思議なことに、一方で冷静な自分の人格というのも途中で現れ始めます。


この時の状態を表現するとするなら


「幻影を見ている自分」がいる一方で、「もう一人の冷静な自分」が自分とホテルの部屋を眺めているという感じで、私は二つの人格に分離した状態にありました。


ここからは幻影を見てる私をA、俯瞰して見ている私をBとしてお送りします。



A「青い光の中で、黒い小人たちが月の光のベールをまとってダンスを踊っているよ、うふふ」


B「うわー、妹のやつ、またポテチ食べてるよ。しかも食べながら俺の漫画読んでるし、うわー油のベトベトが表紙をテカテカにしてる、勘弁してくれよ」


A「ダンスを踊っている小人たちに赤い炎が迫っているよ、そして月の光は炎も照らし、ああ、青い蛇もダンスに加わった、どこからかラッパの音が聞こえてくるなあ、あはは」


B「お父さんテレビ見てるけど、英語だから全然分かってないんだろうなあ、あっ、半ズボンの下で足を掻いてるなあ、それよりなにより、すね毛が濃い」


A「青、赤、緑、黄色全ての光がグルグル回ってメリーゴーランドみたいだ、ぐるぐるー、ぐるぐるー」


B「お母さんの服の染み、四国みたいだな、いやオーストラリアかな、中間をとってオースト四国、いやフォーストラリアの方が語呂はいいな」



そんな感じで、私は完全なる二重の思考で、ハワイの夜を華麗に泳いでいました。


しかしパレードの上演も、太陽が出て明るくなってきた位までで終了し、そのあとはなぜか嘘のようにすとんと眠りに落ちたのです。


さて翌日の正午くらいに目覚めた私。


目覚めると熱はかなり引き、少しぼんやりとした感覚は残ったものの、大分体調は回復してました。

先に観光していた父と妹と祖母に、母と私も合流し観光を再開。


そして徐々に回復する体調と共に、私は不思議な感覚に襲われます。


昨夜の「幻影と冷静のあいだ」を体験した私は、なんだか無性に感覚が研ぎ澄まされたような気がして、なんとなく人の気持ちが分かるような、不思議な気分に包まれていました。


例えばレストランに入り、父がどのメニューを頼むかのかも、前後の行動や表情から推測し


「これはハンバーグカレーを頼むな」

と推測すると、本当にその通りのメニューを頼むのです。


観光地まで連れてってくれたタクシーの運転手さんを観察し

「この次の交差点のタイミングで彼は水を飲むな」

と予想、すると本当にそのタイミングで水分補給をするのです。



徐々に良くなる体調に比例して研ぎ澄まされていく感覚、二日にして再び私のテンションは上がってきました。





そして3日目の朝。



私の体調は完全に回復!!!



気分は爽快!脳味噌はすっきり!感覚は絶好調!!



そんな私は初日に、迷惑をかけまくったことすらどこ吹く風。




「これからのハワイ観光は私がみんなをエンジョイさせてみせるぜ!!」


みたいな状態でノリに乗っていました。


そんなこんなでお昼過ぎ、我々はビーチに移動しシュノーケルを付けて海に居る奇麗な魚たちを見るために海岸に移動しました。

その前に、ヤシの実ジュースを飲もうということになり、みんなで売店で買い、飲もうとした瞬間です。







「うえええええええん」



少女の泣き声が、海岸に響き渡ります。




一体誰の泣き声なんだ?




そう思ったら妹の泣き声でした。



泣いてる意味も分からず困惑する家族たち。


そして少し落ち着いてきた妹の言葉を繋ぎ合わせていくと理由が分かってきました。


初日に体調を崩してからというものの、母はほとんど私にかかりきりになり、二日目以降も常に私の傍にいました。

妹は父と祖母が見ていてくれたのですが、あまりにも母が私の世話ばかりなので、淋しさが爆発してしまったのです。






「・・・・・・」




ここにきて、強烈な自己嫌悪に陥る私。


そうなのです。私は感覚が鋭くなったどころか、妹の気持ちすら分かっていなかったのです。

それどころか、勝手に調子に乗って体調を崩して迷惑をかけたのにもかかわらず、幻影を見たことにより調子に乗り、妹に配慮することすら出来ない始末。


もし私が征夷大将軍なら、こんなやつ、即刻打ち首にするでしょう。


それからは、母が妹とメインで行動して、その後のシュノーケルも楽しかったこともあり、妹の精神も持ち直し楽しい旅行に相成ったわけで、結果オーライだったのですが、あやうく旅行が台無しになるところでした。


そんなこんなで、私のハワイの思い出は、幻影と冷静と妹へのごめんなさいの気持ちが入り混じった、忘れられない記憶の1ページとして刻まれているのでした。

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