<雑記>シルバニアとカブトムシ

雑記

ふと子供の頃に遊んでいた「シルバニアファミリー」の事を思い出します。

自分には妹が居るのですが、良く子供のころシルバニアファミリーのネズミの人形やウサギの人形を使って、家で遊んでいたのです。

例えば1階に向かう茶色い階段を、地底へ向かう巨大ほらあなダンジョンに見立てて、冒険させたり、「緑の丘の大きなお家」というシルバニアファミリーのお家に、恐竜のおもちゃを襲撃させたりしていました。


さて、この間ファミリーレストランに行ったときに、ふと入り口付近のおもちゃのコーナーに、カブトムシの人形があるのが目に入りました。

カブトムシの黒くて、武器のような角を持つフォルムは大人になって見ても、ワクワクするもので、子供の頃の夏休みを思い出します。

実際にやったことは無いものの、カブトムシVSクワガタなどの昆虫バトルがテレビでやってたりすると、録画して何回も見返したりもしていました(ちょっと前もムシキングが流行りましたね)


そんなことをぼーっと考えてカフェでお茶していたときに、ふと




シルバニアファミリーVSカブトムシ

という構図が頭に浮かんできました。





シルバニアファミリーたちが暮らす平和な森に、突如として漆黒の鋼のボディを持ったカブトムシが来襲します。

続々と集まる、ネズミ、タヌキ、ウサギ、ネコそれぞれの代表者たち。

それをじっと眺めているカブトムシ。



アイコンタクトで最初に戦うのはネコになりました。

他のネズミ、タヌキ、ウサギは腕を組みながら、邪魔にならないところに下がります。

そうです、シルバニアファミリーはフェアプレーと個人主義を旨とした集団。

皆で襲い掛かるようなことはしないのです。


みんな集まるけど、戦うのは個人でという、ドラゴンボールスタイルでカブトムシに応戦するのです。


さてまずは、カブトムシがネコにその自慢の角で襲い掛かります。

ヒラリと闘牛士のようにかわすネコ。

ここでネコはすかさず「森のパン屋さん」から持ってきたカチコチのフランスパンで甲羅の部分を叩きます。

しかしびくともしないカブト、不敵な笑みを浮かべています。

ここでカブトムシは相手の意表を突きます。

角を使わず、自分の前足をハサミのように合わせたり、離したりするカブト。


これを見て驚愕の表情を浮かべるネコ。

まさかこいつ

クワガタのものまねをしているのか・・・


なんという挑発行動でしょう、そして全く何の意味もない行動です。

「こいつ狂ってやがる・・・」

ネコはつぶやきます。


こうなってくるとこういう何をするか分からない相手に対して正攻法で行くのは得策ではありません。

ネコはごそごそとふところからあるモノを取り出します。

そうそれはシルバニアファミリー・ネコ一族の家系図です。


何千年も続く、森の土地に根付いたそのあまりに長い巨大なあみだくじのような家系図を見れば、伝統と血の力に、カブトの野郎も角が縮みあがるに違いありません。

一瞬、黒い瞳に動揺を走らせるカブトですが、すぐに漆黒の瞳に平静さが戻ります。

そして、甲羅を開き、羽の間にある書類をごそごそ取り出します。

そして黙ってそれをネコに見せます。


そこに書かれていたのは、真っ黒な巨大な環でした。

約3億7000年前に化石がみつかったものの、詳しくは進化の過程が分からない昆虫という存在。

その巨大な歴史と漆黒の謎を現した、ミッシングリンク家系図をネコの鼻の先に突き付けてきたのです。(ミッシングリンクは失われた環と訳されます)

その闇の不気味なパワーに頭がくらくらするネコ。


このままではまずい!!

態勢を立て直すために、ネコは大急ぎで息子に蔵から家宝を持ってこさせました。


「赤備獅子噛前立兜朱塗胴具足」です!!

そうこれはネコの一族が、まだ甲斐に居た頃に武田信玄が譲ってくれた、赤鬼のようなフォルムの伝説の甲冑なのです。

お前のカブト等、この本格的な甲冑に比べればなすすべもなかろう!

赤い甲冑を身に着け、不敵な笑みを浮かべるネコ。


しかしなんということでしょう!

カブトムシは全くピンと来ていません。

当たり前です、カブトムシの甲羅は自分の体の一部なのです。

装備という概念がそもそも無いわけで、目の前の光景はただのネコのコスプレ姿にしか見えなかったのです。


さて、ここまで有利に戦いを進めているカブトムシが、自分から動き出します。

前足にマイクを持ち、ラジカセをセットするカブト。

そこから激しいギターサウンドが流れ出します。


そしていきなり歌い出すカブト。

♪土の弾けるような粒を、クヌギの木に投げ散らかしたい そんな十代の夏♪

♪どこからか樹液のにおいがするけど、甘い家庭の愛には反吐が出る♪


そうです。なんとカブトムシは、カブトムシ界の青春パンクソングを熱唱したのです。


実はカブトムシ界では陳腐で青臭い歌詞だと、ネットで酷評されているバンドの歌なのですが、そんなことはネコには分かりません。

必死で、音楽での対抗軸を探すネコですが、浮かんでくるメロディーはねこふんじゃったという、ネコの敗北宣言みたいな曲ばかりです。

後ずさりして、息を飲むネコ。

そこにマイクを捨てたカブトが距離を詰めます。

最大のピンチを迎えたネコはここで覚悟を決めます。

「こうなったら最後の手を出すしかない」

赤い兜の下から、何かを取り出すネコ。

それを印籠のように掲げます。


それは猫耳を付けた阿弥陀如来坐像でした。


ネコの家は代々、浄土宗に属しており、熱心な仏教徒だったのです。

とにかく仏にすがる一心で出した最後の手段でしたが、なんとカブトムシがめちゃくちゃ動揺しています。

もはやとどめをさされる一歩手前だと思っていたネコの方もびっくりして、両者の間で数秒間の沈黙が流れます。


沈黙を破ったのはカブトムシでした。

自慢の巨大な角を前足で外し、角を地面に置きます。

するとその角の付け根に何か人形のようなものが付いてます。

そしてそれこそが


茶神阿弥陀昆虫如来坐像でした。


茶色いフォルムで穏やかな顔をしている如来の頭の上には厳かな角が乗っかっています。


そうなのです。仏教の教えはカブトムシ世界にも広がっており、カブトムシ型の仏像も作られていたのです。

お互いが信奉する仏像をただ見つめる二人。

そして、どちらかとも分からずに自然に手を差し出していました。

そうです、仏教の力により争いは回避されたのです。


腕組みを解き、駆け寄るネズミ、タヌキ、ウサギ。

そしてそれぞれがカブトとハグや握手を交わします。


これ以来、シルバニアの森には、カブトムシの交換留学生を受け入れる施設と

「森の中の大きくて荘厳な阿弥陀堂」が出来たのでした。




ここまで考えてふと正気に戻り、辺りを見回すともう夕方になっていました。

そしてコーヒーを手に取り、口に入れるとホットがアイスへと変化しています。


とりあえず今からおかわりを頼みにいこーっと。

(おしまい)

何だかよくわからないモノを目指し、ブログやってます
本の書評や考察・日々感じたこと・ショートストーリーを書いてるので、良かったら見て下さい♪

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