私は先週、なぜかとても鬱々としていたので、宇都宮と大宮で本を読んだり散歩したりして、うだうだ過ごすという生産性皆無なのんびり旅をしてきたのです。
そもそも私はすぐに鬱々とする人間です。
そしていつもの鬱々具合でしたら大宮でゆったり過ごせば充分なのですが、今回の鬱々具合は、大宮ではカバー出来ないほどの鬱々だったので、より遠出をすることにして宇都宮まで足を運んだのです。
しかしなぜ宇都宮に行ったかと言うと大宮から一本で行けるという理由の他に、私の過去の因縁があります。
宇都宮城野宿事件
私は2年位前に、何だか餃子とか食べたいなー。
というアホな理由で、そうだ宇都宮に行こう!と思い立ち栃木県に初上陸しました。
JR宇都宮駅から東武宇都宮駅の間が徒歩で結構歩くものの、とても散歩するのに気持ちよく、東武宇都宮駅周辺の商店街のアーケードが楽しくてテンションがマックスになった私。
気付くと時間が夜の9時位になっていました。
さてそろそろお目当てのネットカフェに行こうかしらと思い、バッグの中を見渡すと何と身分証とかを入れていたカード入れを忘れてきたことに気付きました。
これではネットカフェに入れない!
しかしまだ慌てる様な時間ではありません。
こういう時は24時間のカラオケを利用すればよいのだ!
しかしその日に限りカラオケはどこも満室・・・
大丈夫、こうなったら大宮駅まで行って身分証無しで泊まれるスパで一泊だ!
しかし何と、うだうだしているうちに大宮駅の終電は過ぎていました。
よし、ならばファミレスで24時間営業の店でゲームをして夜を明かそう。
しかし何と宇都宮駅近辺には最大でも深夜1時までやっているファミレスしか無かったのです。(当時の私調べ)
とりあえずファミレスに移動し深夜一時まで粘るものの何の解決策も浮かばず・・・
とうとう私は、宇都宮城址公園のベンチで夜を明かすことになったのです。
さらに私には外で夜を明かすことに加え、一つの懸念材料がありました。
そうそれは本多正純のことです。
いきなり何の話かと思うでしょうが、本多正純とは江戸時代の武将で家康の最側近の一人とも謳われる人物です。
正純は宇都宮藩の藩主として宇都宮城を治めていたのですが、秀忠の時代に「宇都宮城釣天井事件」と言われる宇都宮城に仕掛けを施して秀忠を暗殺しようとしたという疑いをかけられて改易となり、その後は寂しく人生を終えたのです。
この事件の背後には家康の側近だった正純が、秀忠の時代になっても大きな顔をしているという世代交代に伴う権力闘争的側面が強く、正純は無実だったのではないかと言われています。
私はそんなことを宇都宮城址公園のベンチで思い出し
「もし本多正純の怨霊が出てきたらどうしよう・・・」
そんなことを思いながら一人恐怖と淋しさと格闘していたのです。
しかし今回は、ちゃんと身分証も持ち、事前に泊まるところをしっかり調べて行ったので、無事に駅から徒歩10分くらいのところのスパのカプセルホテルに泊まれました←前回もしっかり調べればあった可能性大
ここに宇都宮リベンジが成功したわけです←なんのこっちゃ
お寿司の気付き
今回の旅は鬱々の解消なので、沢山お寿司を食べました。
そうですお寿司を食べれば食べるほど鬱々は解消されるのが世の道理なのです←私ルール
とはいえ私に余分なお金はまるでない!
なので自然と一皿100円の回転ずしに足は向かいます。
さてさて無事に回転ずしに入ってタッチパネルを見たら衝撃!
「100円の皿が無い・・・」
そうインフレによる値上げの波が我らデフレ世代の心の友、 回転ずしにまで波及していたのです。
私は最近、日本の政治にげんなりうんざりげっそりしているので、あまりニュースを見ないようにしているのですが(世界のニュースは見るようにしてます)その弊害がここで私を襲いました。
とりあえず回転ずしを楽しんだあとに、私はここで大きな方針転換をします。
「こうなったら今後は、回らないお寿司屋さんで10貫くらいで1000円位のランチを優雅に楽しもう!」
そう、これはもう「無尽蔵に15皿とか爆食いするのを辞める時だぞ」という何者かのメッセージに他なりません。
これからはランチ優雅寿司派に鞍替えするっきゃない。
そして二日目の大宮では、駅前の人気店で「13貫1200円」の握りランチを食べたのです。
カウンターでお寿司を待っていると職人さんがお寿司を握るのが見えます。
思えばいつも回転ずしばかりに行っていたので、こんな眺めも久しぶりです。
しかし、その時ふとこんなことを思ったのです。
「あれだな・・・めっちゃ握ってるな」
握り寿司だから握るのは当たり前のことなのですが、久しぶりにその光景を見ると、あまりの握りっぷりに軽く衝撃を受けてしまいました。
私は潔癖症ではないので、これで寿司が食べれなくなるとかそういうことではないですし、むしろ大好きです。
ただ他の料理を色々見回しても、ある程度グレードが高い料理なのに人が握ることが前提の料理というのはとても珍しいのでは?と思ったのです。
職人の手のぬくもりが料理に含まれている料理というのは、なかなかすごいものです。
今回、ランチのお寿司を食べてみて、何の意味も脈絡も無く、ふとそんなことを思ったのでした。
(ついでにそこのお寿司は最高に美味しかった)
やっぱりドストエフスキーはすごい
本を読んだりぼーっとしたりするウダウダ旅ということで、その時のテンションで旅先の本屋で本を勢いで買いました。
色々買ったのですが、今回の旅で読了して衝撃を受けたのがドストエフスキーの「白夜/おかしな人間の夢」です。
「白夜」の方も、その瞬間の感情や救いを至高のものと捉える独自の価値観がしっかり物語として昇華されていて最高だったのですが、「おかしな人間の夢」は頭を殴られるような衝撃を受けました。
この短編は、自らの事をおかしな人間と言っている主人公が語る自分や社会の状況と、自分が見た夢から、思想や信仰、哲学的な主張を織り交ぜたような自分語りへと展開していく作品なのですが、その内容が本当に濃くて圧倒的にすごいのです。
深く鋭い洞察と直観力を全開で文字にしたような内容は唯一無二です。
そして本作を読むと、ドストエフスキー作品に通じる人間は惨めだけども、その惨めさをどこかで愛おしく包み込んでいるような精神を深い部分で存分に感じることが出来ます。
そんなこんなで今回の宇都宮と大宮の旅は、とても自由に過ごし、かつ最高の読書も出来、とても素晴らしいものになりました。
また鬱々としたらどこか遠くに行きたいものです。←そもそも鬱々とならないようすべきでござる