<雑記>甘い憂鬱

雑記

この前ふと電車に乗っていた時のことです。

唐突に、そして突然に気付いてしまったのです。


「あっ、俺シュークリーム好きじゃないわ」


いきなり何の話だと思うでしょうが、自分でも全く脈絡が無かったのでびっくりしたのです。

前日にシュークリームを食べたわけでも、CMを見たわけでもない・・・

しかしそれは神の啓示の様に、唐突に、そしてスッと自然に胸に落ちるように圧倒的な納得として私に降りてきました。


私の人生にはこういう脈絡がない、感覚の発露がたまにあります。

そしてそのたびに発露の原因が分からず、もやもやと困惑を抱えたまま時が過ぎていくのです。



そんな困惑の一方で「シュークリームが苦手」という結果から逆換算して考えると、まるで芋づる式の様に次々と、その理由が浮かび上がります。


まず外側の皮がぶよぶよしています、ここからして第一印象は悪い。

そして極めつけは、そのぶよぶよに歯を立てようもんなら、中からクリームが破裂したようにあふれ出る、あの感じです。

この感じが圧倒的にイヤなのです。


別にクリームも外側の皮自体も単体では苦手でないのに、それが組み合わさったときに現れる感触は嫌い。

1足す1は2にならないことの証明みたいな話です(そうかしら笑)



さて、ここにきてシュークリームが嫌いな事実も理由も明確になったわけです。


しかし冷静に考えてみると



「この事実は決して私を幸せにはしない」

そのことに気付きます。


何を隠そう、シュークリームや鳩サブレは、お手軽お土産ランキングの頂点を争うトップオブ手土産!

今までも数知れず、差し入れでもらったり、お土産でもらったりしてきたシュー氏(以下、この名称)

これからもあらゆる場面で出会うことは必然で、避けようがありません。


苦手と気づくまでは、何も考えず「美味しいというスタンプで押した様な喜びの顔」を浮かべることが出来ましたが、「苦手である」という圧倒的事実に気付いた今、果たして私に喜びの演技が出来るでしょうか?


そうです、世の中には気付かずにうやむやにしといた方がいいこともあるのです。


さて、ここで私の脳内の話をします。


私の脳は、私の体の一部でありながら実は全く持って私の管理化にはありません。


それどころか意識の命令をことごとく無視し、私を窮地に陥れる装置としてすら働いています。


意識では

「苦手なものをこれ以上探しても良いことは何もない」

そう分かっていながら、もう片方では脳の好奇心のヤロウが、全力で苦手なものをリサーチしているのです。


「頼む、もうやめてくれ!!」


そう願っても、まるで自動スーパーコンピュータ―の様に、検索を続ける好奇心。


そして、また一つ脳は、悲しい結論を私に叩きつけます。



「俺、チョコレートも苦手だわ・・・」



衝撃の事実です。

何を隠そう、私は今朝まで喜んでパックの個包装のチョコを一心不乱に食べていたからです。


しかし、この「苦手の事実」から逆算してみると、私は基本的にそこにあるものをただ食べる卑しい肉体の持ち主であり、決してチョコが好きではないことが浮かび上がってきます。



「チョコが苦手」という事実・・・

そしてこの話は、シュー氏の時とは違い、もう一人別の人物が登場します。


その人物の名前は「あんこ」です。


子供のころから、なんとなく食べていたあんこ。

お汁粉や、あんぱん、和菓子など、今でも自分が良く食べる物に必ず入っているスターティングメンバ―です。

「チョコが苦手」という事実は、この「あんこ」についても私に見つめ直させることになりました。



あんこは、甘いくせにめちゃくちゃ上品なやつなのです。


めちゃめちゃ甘いことは甘いあんこ、しかしその甘味には、どこかしら柔らかさ、上品さが見え隠れしています。

それに引きかえチョコ氏(以下、この名称)は、何か甘さがどぎつい。

そして後味が何かしらの嫌らしさを想起させるのです。


そして、両者を比較すればするほどに

「チョコが苦手」

その事実が私にのしかかります。


あんこが好きなのに気づいたのはいいとしても、チョコ氏が苦手なことには気づきたくなかった!


なぜなら、私は脳が疲れた時に甘いものを補給しないと、頭が小学校入学時まで退化する、インスタントベンジャミンバトンみたいな人なのですが(自分で書いてても例えがさっぱり)

その補給の大部分をチョコ氏が担っていてくれたのです。

今後の補給をあんこに担ってもらうにしても、一口サイズのあんこのお菓子はあまりないのです。

これは由々しき事態です。



そんな憂鬱を抱えたまま帰宅した私。


そんな時に限って夕飯に出てきたのが

「かぼちゃの煮つけ」でした。


私は愕然としました。


そう何を隠そう、かぼ煮殿(以下、この名称)に関して言えば







「気付くまでもなく単純に嫌い」


だからです。


かぼちゃのタルトとか、加工品は好きなんです。


しかしどうしても、あのねちゃねちゃ感だけは我慢が出来ません。


シュー氏、チョコ氏、ときてこの仕打ち・・・


私の意識はその瞬間、不思議な世界に飛びます。








奥の一段高い座布団に座る「かぼ煮殿」

その一段下の左には「チョコ氏」

右には「シュー氏」が座っています。


そこに縄で縛られた私が入ってきます。




かぼ煮殿「これが罪人か」

シュー氏「はい、この者は思考上の謀反を働いたのです」

かぼ煮殿「何、どういうことじゃ」

チョコ氏「我が、甘味幕府の御家人でありながら、その甘さをあろうことか選り好みし、罵詈雑言を浴びせたのです」

かぼ煮殿「何と!!して誰に罵詈雑言を浴びせたのじゃ」

シュー氏「まず我々二人に対し、破裂する感触がイヤだの、後味がイヤらしい等という表現を使い、不当に貶める発言をしました」

かぼ煮殿「何ということじゃ、身の程をわきまえよ!」

チョコ氏「さらにあろうことか、かぼ煮殿に関しても、ねちょねちょしているという主に向けた言葉とはおよそ考えられない言葉をあっけらかんと使ったのです」

かぼ煮殿「何と!!この将軍である我を侮辱するとは・・・」


かぼ煮殿「許せん!即刻打ち首にせよ!!」


シュー氏&チョコ氏「はっ!!!」






そこまで考えたところで唐突に声が聞こえます。




母「何ぼーっとしてるの!!」

私「いや、あのかぼちゃの煮つけが苦手とあれほど言って・・」

母「文句言わず、とっとと食べやがれ」

私「・・・はい」






そして私はこれからも続く、苦手な甘みとの歩みに絶望しつつ、涙を飲んで煮つけを口に運んだのでした。

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