<書評>「2001年宇宙の旅」 未知の彼方の奔流へ放り込まれる唯一無二の読書体験

書評

「2001年宇宙の旅」はSFの大家・アーサー・C・クラークさんの長編小説であり、スタンリー・キューブリック監督の映画版の原作でもあります。(後述するように制作はほぼ同時進行)

私は常々、一番好きな映画は「2001年宇宙の旅」だと言ってきました。

最初に本作を見た時は、途中まで映像は綺麗なものの退屈に思え、眠気がマックス状態だったのですが、ラスト30分くらいの畳みかけが、本当に物凄く

「我々はどこから来て、どこへ行くのか」

という根源的な命題を、映像という形で、怒涛の奔流のように脳内に流し込まれ、私は本作を見終わった時には

「もう映画はこれ以上のものは出ないかな」

と生意気な事を思ったほどでした。

そんなわけで、本作の原作版というか小説版をクラークさんが書いていることは知っていたのですが、映画があまりに衝撃だったので、それを超えることは無いだろうと避けてきたのです。

しかし冷静に考えると、「地球幼年期の終り」も「都市と星」も心底わくわくするほど面白かった・・・

これはやはり小説版も読まなくてはいけないのではないか?

そして小説版は、2010年、2061年と宇宙の旅シリーズは続いているらしい・・・

それなら、読むしかなかろう!!

そんなわけで、今回私は書店で映画の特別な表紙がかかっている本作の決定版を買い、一気に読了したのであります。

まず私は謝りたい。

何でこんなすごいものをここまで避けてきたんだ!すまぬクラーク先生!

映画は確かに強烈な、ある種の宗教体験の様な感覚に特化していたし、それはそれで素晴らしい。

しかし小説版はまず何より、ストーリーラインや起こったことがめちゃくちゃ分かりやすい!

そして一番重要なのは「我々はどこから来て、どこへ行くのか」の実感や体験の部分です。

私は心底驚きました。その強烈な体験は映画版を超えていたからです。

宇宙の彼方・精神の彼岸・未知の奔流に放り込まれるような文字の揺籃は圧倒的で、私は読了後、ちょっとメンタルがおかしくなりました←圧倒的パワーを持つ作品に触れるとすぐこうなる

私は文学や小説の可能性を舐めていた。そんなことを本作を読んで痛感させられました。

そして本作においては序文のクラークが記した本作の映画版と小説版の経緯に関しても、自分はかなり楽しめました。(自分が勝ったのは決定版で、もしかしたら収録されてない版もあるかも)

クラークとキューブリックがお互いを認めつつも、コミュニケーションが上手くいかず、かつお互いのプライドもあり、それがぶつかり合いつつ、何とか作品が進んでいく感じのひりひり感。

それが文字の奥からばしばし伝わってきます笑

「2001年宇宙の旅」は、二つの巨大な才能が生み出した奇跡のような作品ですので、是非、小説版も映画版も両方見て欲しいです。

私は今後、小説版の宇宙の旅シリーズを読み進めていきたいと思います!

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