<歴史>「鎌倉殿の13人」4~7話雑感

鎌倉殿の13人

頼朝と北条一族はついに挙兵を決行!!

伊豆の目代・山木を打倒し、華々しく初戦の勝利を飾るものの、大庭景親が率いる大軍にはなすすべなく敗退。

必死で山中を逃げ回り、海路で房総半島に脱出。

ここで態勢を立て直すべく、房総半島の地に根を張る、千葉氏、上総氏を味方に付け、いよいよ頼朝の快進撃が始まる・・・

大体ここまでが、4~7話で描かれました。

それでは、ここからはここまでの話を細かいトピックスで振り返っていこうと思います。

時政と義時、そして宗時

この段階で、親子の個性の違いが存分に出ていて面白いですね!

一見アホで可愛いおっちゃんに見える時政ですが、さすがに坂東で生きてきただけはあって、とてもしたたかです。

「俺は大庭が嫌いだったんだ」

とか言って、散々なののしりあいをしたくせに、負けて逃げる道中に

「俺は大庭に頭を下げてもいいと思ってる」

あげく

「頼朝の首を差し出せばいい。あいつは大将の器じゃねえぞ」

などど言う変わり身の早さ。

確かに頼朝の態度もわがままで、時政の言い分も分からなくはないですが、それにしてもな発言です。

しかし、この自分の身や利益が第一で理屈とか面子は二の次みたいな精神は、この時代の関東で生き残るために必要なメンタリティだったんだろうと思います。

じゃないと戦国時代よりも野蛮でルール無用なこの時代では、すぐに首が飛んじゃいますからね。


しかし対照的なのが義時で、自分が一度決断したならば、その心を遵守しようとするの垣間見えます。

義時は、何かの目的のその根本の部分についてしっかり考えているので、基本的に軸がぶれないんですね。

一方の時政オヤジさんは、甲斐(今の山梨県)に根を張る源氏の武田に援軍を要請する際も、武田信義をこの戦の旗頭に据えることをほいほい承諾し(すぐに頼朝が納得しないと義時にたしなめられますが)、あげく北条だけでもこちらに味方に付けと言われ喜んじゃう始末(かわいいけどね)

このその場の自分の利益優先で行動する時政の生き方は現時点ではスタンダードな坂東での生き方なのでしょう。

逆に義時のような、理であったり、その裏の精神を見る人の方がまれです。

しかし、これが鎌倉政権が出来るにつれ、その時代における作法も変わっていきます。


後の時政と義時の路線対立が、この時点から徐々に出ていてとても面白いですね。


そして大事なのが、長男の宗時。

本作で熱血漢として描かれている彼は、今後の北条の精神の羅針盤としての役割が割り振られているのだと思います。

まったく計算せずに行き当たりばったりで、やたら熱血な部分ばかりフィーチャーされていたのも、義時に魂を伝えるという点を強調したかったからだと思われます。

そしてその魂の核になるのは

「坂東武者だけの政権を作り、その頂点に北条が立つ!!」

この1点です。

源氏も平氏もどうでもよく、その目的の為に頼朝が必要だったと、爽やかに言う宗時。

このシーンが義時のその後の人生に多大な影響を与えたのは火を見るより明らかです。

実際の人生でも、その一言で救われたり、転機になったりする言葉というのがありますが、今回の大河は歴史の事実に、人間の精神をしっかりと添わせていて、本当に見ごたえがあります。

残念ながらここで、宗時は無念のドロップアウトを迎えるわけですが、その精神は義時に充分に引き継がれました。



梶原景時という男

大庭軍にいる、頭の切れる軍師のような恐ろしい男・・・

中村獅童さんが演じる梶原景時です。

後の頼朝の超側近かつ秘密警察長官みたいな存在になる彼ですが、もうこの時点でただ者ではない存在感丸出しでですね。

そして有名な、頼朝を見逃すシーン。

表情の演技だけで、雷と頼朝、そしてその場の光景により、そこに神を見たのが分かりました。

本作の梶原景時はめちゃくちゃ期待出来るぞ、正直、現時点で拍手喝采です。


景時は今後も、様々な野蛮なシーンや、くせ者としてのシーンが沢山出てきて、鎌倉殿における最重要人物ともいえる一人になるので、注視して見ていきましょう。

今後のあんなシーンやこんなシーンが楽しみだ!



りくと政子

時政の後妻のりくと、頼朝の妻の政子。

この二人の対比も、非常に良く描かれています。


お互いの共通点としては、何か大きいことを成し遂げる男に思いを馳せた点です。

ある意味で共通の精神の下地みたいなものはあるわけですね。

しかし、中身をよく見るとその性質がまるで違います。

芯が強く、一途でありながら、真面目で一方向しか見えなくなりがちな政子に対し、りくは非常に楽天的で、精神の上手な逃がし方を知っているタイプです。

これが現時点で上手く作用していて、りくのアドバイスが政子の心を楽にしているのが描かれていてほほえましいです。

しかし、りくは夫の時政と同じく、自身の快楽や利益に素直で、それが最優先です。お寺の掃除も嫌がってます笑

一方、政子はお寺の掃除も一生懸命やり、一本筋の通った精神に重きを置いている、そんな風に見えるように描かれています。

この二人の鎌倉政権の推移による、関係性の変化も注視して見ていくと、より鎌倉殿が楽しめると思います。



各地の源氏たちのトップ争い

時政と義時が、甲斐の武田信義に援軍を頼みに言った時。

「うわっ、信義ってめちゃくちゃ偉そうじゃん!!」

と思った人も少なくないのではと思います。

しかし、これは仕方がないことで、頼朝は頼朝で、源義家という英雄をルーツとする清和源氏の本流であるというプライドがありますが、甲斐源氏だって清和源氏のプライドは同じです。

さらにこれから登場する、源義仲だって信濃源氏で清和源氏の一族です。

つまり同じ平氏打倒の志はありこそすれ、みんながみんな

「俺が源氏では一番だぜ!」

って内心思ってるんですね。

だからもうこの時点から、源氏一族内紛殺し合い劇場は始まっているのです。

しかし、平氏は本当に一族同士が仲が良いのに、源氏はまじで仲が悪いのはどうしてなのでしょうか?


後の室町の足利氏も、徳川でさえ、親子や兄弟で争います。

鎌倉殿を見る時に、平氏VS源氏の視点だけでなく、源氏VS源氏の視点に注視してみると、とんでもなくマッドマックスな時代なんだな!と再認識出来るので、よりドラマが面白く、そして野蛮・・いや野生味を感じることが出来ます笑



千葉氏と上総氏の重要性

房総半島に逃げた頼朝が、態勢を立て直すことが出来たのは、ひとえにこの二氏による協力が大きいです。

この房総半島に根を張る大きい武士団が、頼朝についたことで、鎌倉幕府への道筋が開けたと個人的に思っています。

なんでこの二氏が頼朝に味方のしたのかといえば、もちろん、英雄、義家や、頼朝のお父さんである義朝への恩という「血」の力はあるとはいえ、やっぱり平氏の治世が、貴族や京都ばかりをみていたのが根源なんでしょうね。

清盛は確かに軍事的センスや、政治家としての能力は高いと思いますが、やはりそれは平安時代の意識の延長戦であって、農民や武士階級の利益を背負って出てきた頼朝と比べると、歴史的評価は個人的に低くなっちゃいますね。


さて、そんな二氏でも実は、千葉氏が快く頼朝についたことこそが、実は頼朝にとって本当に重要なことだったのだと思います。

ドラマでも描かれてましたが、判断を迷っていた上総氏にも影響を与えたことは言うまでもありません(佐藤浩市さんの表情の演技がすごい)

もちろん上総氏の大軍勢が決定的影響を頼朝軍に与えたのは事実ですが、千葉氏が付いた前段階こそがある意味で頼朝挙兵成功のハイライトとも言えるのではと思います。

しかし、それにしても上総広常を演じる、佐藤浩市さんは最高ですね。

渋くてかっこよすぎ!これぞ男がほれる男ってな感じですよ。

そんなアウトレイジな広常が今後、どういう風になっていくのかも鎌倉殿の楽しみの一つですね。



和田義盛という男

単細胞で、荒くれもの豪快な坂東武者!

それこそが和田義盛です。

三浦氏の末裔で、所領の土地名から和田の姓を名乗っている彼ですが、山本耕史さん演じる三浦義村と比べると、性格の違いに爆笑しちゃいますね。

勝手に矢を射って畠山と戦闘になっちゃうわ、上総氏に援軍を頼むときの秘訣が眉を剃ることだったり、熱血一人コントの様相を呈しています。

義時とのコンビで、上総氏の援軍要請に行くのも、この二人の対比が明確に出ていて面白いですね。

理屈や精神、言葉を重んじる義時と、とにかく力押しの和田義盛!

こんなはちゃめちゃな義盛さんですが、実は鎌倉政権のかなりの重要人物です。

今は友人関係に近い義時とも、のちには政治上で色々あります。

そもそもタイトルの「鎌倉殿の13人」の13人の合議制のメンバーの一員ですしね、この義盛の個性にも是非注目してドラマを見ていってほしいです。



頼朝のカリスマ

冷血漢な政治屋として描かれがちな頼朝さんですが、本作ではダメな部分もしっかり描かれます。

とにかく女好きなところ。

弱音を吐きがち。

けっこうわがまま。


まあ、上げたらキリがないですが、個人的にもかなりダメダメな部分が多かった人だとは思っています。


しかし、私は源頼朝を政治家として、かなり高く評価しています。

農民や武士という階級の政権を打ち立てて、平安時代の無責任状態から、秩序を曲がりなりにも回復したというのが大きい理由ですが、この人の政治的カリスマ性というのはちょっと他者と比べることが出来ないと思います。

そもそも、挙兵の段階で頼朝には、自前の兵がいないのです。

頼りにしてる北条は、妻の一族で、他の一族も源氏への恩やらなにやらありこそすれ、頼朝の自前の軍はいません。

後の足利だって徳川だって自前の軍を持っていたわけで、いかに頼朝が何もない状態からのスタートだったのかが分かります。

ドラマでも言っていましたが、そんな状態の頼朝の「血統」を坂東の武者が利用していた側面があるのは当たり前で、特に序盤は頼朝も相当、坂東武者に気を使わなくてはならなかったはずです。


だからこそ頼朝は

「お前だけが頼りだ!」

と言ったりして、しっかり体を張ったコミュニケーションを実践してます(ドラマで見ると笑えるが実際にあれをやられたら、意外と相手を好きになっちゃうものです)

さらに、最初の挙兵の時に、堂々と正面を通っていけ!と言っていたのも

形式を整えることの重要さを熟知していたからです。

儀式や形式を積み重ねていくと、そこに本当の権威が醸成されていきます。

ふざけていながらも、頼朝は本質的な部分では戦略的です。


そして今回の上総広常のシーンです。

有名なシーンですが、遅参した広常に対し

「帰れ!!」

と一喝する頼朝。

昼から待たせた無礼を糾弾し、遅刻する兵など戦場では役に立たないとたたみかけます。

挙句の果て、もし望みなら一戦交えても構わないという、すごい言葉を投げかけます。


そして、この振る舞いにこそ、頼朝のカリスマ性の神髄があります。

まず、頼朝軍はのどから手が出るほど上総氏の兵が欲しいのは事実です。

しかし、ここで下手に出て軍に迎え入れても、短期的には結果が出るかもしれませんが、軍全体の統制に影響が出ることを頼朝は分かっているのだと思います。

ある種賭けではあったでしょうが、ここが重要なポイントだというのを頼朝は外しません。

上総広常を一喝する態度は、後の征夷大将軍ここにあり!!

という感覚を想起させます。

そしてこれは、その場にいた他の部下に対しても、カリスマ性を高めることになります。

自前の軍がいない頼朝は、坂東武者を利用しつつされつつ軍を進めるわけですが、後半になるにつれて圧倒的なカリスマ性を持つ征夷大将軍になり、皆が頼朝の評価を気にするようになっていきます。

頼朝が着実にカリスマになっていく様を、人間的にダメな部分とバランスよく見せる脚本に脱帽するばかりです。

とはいえ、現時点での頼朝は、まだ坂東武者の顔色をかなりうかがわなくてはならない段階にあります。

しかし頼朝は、利用価値と自分の利害とのバランスを冷静に見極めています。

頼朝が突出する力を持つにつれて、色んな人々が粛清されていきます。

誰がどういう理由や言動で粛清されていくのか、それに注目してドラマを見ると、より深くこの時代の残酷さや、政治の冷徹さが味わえます。

そしてそれを踏まえて、それでも頼朝をすごいと思うか、それとも許せないと思うかは、各々判断が分かれることになるだろうと思います。



最後に

正直、こんなに毎週楽しみな大河は生まれて初めてかもしれない。

そもそもが、鎌倉時代大好物というのもありますが、想像以上にドラマとして面白い!

ただでさえ、面白い題材を、さらに美味しく調理してくれるのだから、もうこんなに幸せなことはありません。

またきりがいいところで、次の感想を上げるので、良かったら見て下さい♪

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