<かえる文学>会話奇譚

かえる劇場

何だかよく分からないアホなショートストーリーで頭の休息を。

それが「かえる劇場」のモットーです。

あまり期待せずに気楽に見て下さい♪

会話奇譚

<strong><span class="fz-16px">男</span></strong>

いつもの喫茶店でいつものコーヒーを飲む

これぞ至高の贅沢だ・・・

さてそろそろ店を出よう

<strong><span class="fz-16px">男</span></strong>

さてこの道を抜ければ駅に出るな

今日は真っ直ぐ帰るとしよう

<strong><span class="fz-16px">謎の男</span></strong>
謎の男

すいません、少しお時間いいですか?

<strong><span class="fz-16px">男</span></strong>

はい、何でしょうか?

<strong><span class="fz-16px">謎の男</span></strong>
謎の男

あなたは45点です

<strong><span class="fz-16px">男</span></strong>

あまりの失礼な発言に衝撃を受けています

<strong><span class="fz-16px">謎の男</span></strong>
謎の男

いえ、失礼ではありません

あなたの「会話」が45点だからです

<strong><span class="fz-16px">男</span></strong>

充分失礼です

それは私の言葉に対する侮辱です

<strong><span class="fz-16px">謎の男</span></strong>
謎の男

いいえ、失礼ではありません

私は、あなただけでなく先ほどいた喫茶店の全ての会話の点数が45点だと言ったのです

<strong><span class="fz-16px">男</span></strong>

ちょっと意味を掴みかねます

<strong><span class="fz-16px">謎の男</span></strong>
謎の男

私はこの

「高性能集音アベレージレコーダー」であの喫茶店全体の会話を集音していました

<strong><span class="fz-16px">男</span></strong>

盗聴は立派な犯罪です

<strong><span class="fz-16px">謎の男</span></strong>
謎の男

ご指摘の通りです

このレコーダーは集音だけでなく、全ての会話をまぜて足し平均化することにより、その場所の会話の点数を出すことが出来るのです

<strong><span class="fz-16px">男</span></strong>

私は何も指摘してません

幻の私との会話はやめてください

<strong><span class="fz-16px">謎の男</span></strong>
謎の男

そして先ほどあなたがいた喫茶店の会話点数が45点だったのです

<strong><span class="fz-16px">男</span></strong>

なるほど45点の意味は分かりましたが、それは果たして低いんですか高いんですか?

<strong><span class="fz-16px">謎の男</span></strong>
謎の男

東京の喫茶店の平均点が55点ですから赤点ですね

<strong><span class="fz-16px">男</span></strong>

なるほど、みんながクソみたいな会話をしていることは分かりました

<strong><span class="fz-16px">謎の男</span></strong>
謎の男

私はこんな肥溜めみたいな会話の現状を変えたいのです

<strong><span class="fz-16px">男</span></strong>

物凄い例えと言いようだ

ていうか私は喫茶店で一人でしたから何も言葉を発してませんよ

<strong><span class="fz-16px">謎の男</span></strong>
謎の男

いいえお坊ちゃまは存分にお言葉をお発しになられてます

<strong><span class="fz-16px">男</span></strong>

いきなり執事キャラになるのはやめて下さい

何か喋ったかしら?

<strong><span class="fz-16px">謎の男</span></strong>
謎の男

「美味い」「ふう」

「はあ」「ほお」

の4つのワードをお喋りになりました

<strong><span class="fz-16px">男</span></strong>

悲しい独身男の独り言のオンパレードじゃないですか

<strong><span class="fz-16px">謎の男</span></strong>
謎の男

しかしこの4ワードが喫茶店の平均点を大きく底上げしています

<strong><span class="fz-16px">男</span></strong>

ていうかあの喫茶店にいた他の人はどんな会話をしていたんですか

<strong><span class="fz-16px">謎の男</span></strong>
謎の男

一組がパパ活相手との相談

一組がデリヘルの面接

一組が宗教の勧誘活動ですね

<strong><span class="fz-16px">男</span></strong>

まじで世も末だった!

僕のいきつけのお店とんでもないスポットだったんだな・・・

<strong><span class="fz-16px">謎の男</span></strong>
謎の男

ーイ!

さて一段落したところで、このレコーダーの機能を紹介します

<strong><span class="fz-16px">男</span></strong>

テンションアップのタイミングを間違えるどころか、こちらの急所を突くレベルのタイミングです

集音以外にも機能があるんですか?

<strong><span class="fz-16px">謎の男</span></strong>
謎の男

はいAIが先ほどの喫茶店の会話をまとめて要略したものを、50文字以内で文章にしてくれます

<strong><span class="fz-16px">男</span></strong>

それは興味がありますね

どんな文章になるんですか

<strong><span class="fz-16px">謎の男</span></strong>
謎の男

では出来上がった文章を読み上げます

<strong><span class="fz-16px">男</span></strong>

お願いします

<strong><span class="fz-16px">謎の男</span></strong>
謎の男

「これからご飯を食べてホテルにおわす神々を5万円で面接した後、指名は10%上乗せで1回でもいいから集会に顔を出してくれたら、すごいことをしてあげる、はあ、ふう」

<strong><span class="fz-16px">男</span></strong>

すごい!パパ活・面接・勧誘がお雑煮のようにごった煮になっている

ていうか僕の溜息が最後に入ると、めちゃくちゃ卑猥だ

<strong><span class="fz-16px">謎の男</span></strong>
謎の男

お坊ちゃま、そんなに興奮されますと肺にさわりますよ

<strong><span class="fz-16px">男</span></strong>

唐突な主治医キャラはやめてください

そして私は肺病でもないですし、むしろ健康優良児です

<strong><span class="fz-16px">謎の男</span></strong>
謎の男

しかしこれで分かったでしょう

世間の会話の退廃が

<strong><span class="fz-16px">男</span></strong>

うーん、でも今の所

さっきの喫茶店が終わってるってだけだからなあ・・・

逆に会話の点数が高い場所はどこになるの?

<strong><span class="fz-16px">謎の男</span></strong>
謎の男

ちょっと待ってください

過去の測定データを調べてみます

<strong><span class="fz-16px">男</span></strong>

あっ、この町の病院とかは点数が高そうですね

お医者さんの言葉は理路整然としているイメージがありますし

<strong><span class="fz-16px">謎の男</span></strong>
謎の男

いえ35点ですね

<strong><span class="fz-16px">男</span></strong>

まさかの喫茶店以下!

でも、お医者さんが優しく患者さんと会話してるイメージが・・・

<strong><span class="fz-16px">謎の男</span></strong>
謎の男

内訳を言います

医者と看護師の8割が性的な会話をしており、大きく点数を下げています

<strong><span class="fz-16px">男</span></strong>

まさかの不倫病棟だった!

<strong><span class="fz-16px">謎の男</span></strong>
謎の男

あと医者の3割が、適当な医学用語を並べミルフィーユのように重ね合わせて悦に浸っています

喋ってる本人すら言っている内容を分かっていません

<strong><span class="fz-16px">男</span></strong>

世紀末だ・・・

<strong><span class="fz-16px">謎の男</span></strong>
謎の男

まだ21世紀は始まったばかりですよ

<strong><span class="fz-16px">男</span></strong>

さっきのは例えです・・・

あっ、この町の結婚式場とかは点数が高いんじゃないですか

働いてる人も、式を挙げる人も幸せそうですし・・・

<strong><span class="fz-16px">謎の男</span></strong>
謎の男

いえ25ですね

<strong><span class="fz-16px">男</span></strong>

まさかの不倫病棟以下!!

<strong><span class="fz-16px">謎の男</span></strong>
謎の男

内訳を言うと

新婦側の友人の8割の会話が妬み・嫉みの類です

そして新郎側の友人の会話の9割が猥談・下ネタ自慢です

まさに「天下一武道会」(テンシモイチブドウカイ)です

<strong><span class="fz-16px">男</span></strong>

上手い様な上手くない様な例えやめてください

<strong><span class="fz-16px">謎の男</span></strong>
謎の男

ついでに式場の従業員の会話の3割が「白ブタ」「骸骨伯爵」など新郎新婦の容姿の揶揄

3割が料理の原材料の偽装について、4割が積立NISAについてを喋っています

<strong><span class="fz-16px">男</span></strong>

誰も祝福する気持ちが無い・・・

<strong><span class="fz-16px">謎の男</span></strong>
謎の男

あっ、過去のデータの検索が終わりました

えーと得点が1位なのは・・・

刑務所ですね、88点です

<strong><span class="fz-16px">男</span></strong>

刑務所・・・

<strong><span class="fz-16px">謎の男</span></strong>
謎の男

ええ、会話の主な内容は

これからの目標と理想と実現可能性について

神がいるとするなら、それは精神に宿るのではないか

認識とは授けられた恩寵なのか否かについて等ですね

<strong><span class="fz-16px">男</span></strong>

塀の中で自分を見つめなおすどころか、とんでもないレベルまで潜っている!

<strong><span class="fz-16px">謎の男</span></strong>
謎の男

あっ、さらに上に「殿堂入り」があります

墓場で、99点ですね

<strong><span class="fz-16px">男</span></strong>

墓場・・・お寺の人の会話ですか

<strong><span class="fz-16px">謎の男</span></strong>
謎の男

いえ純粋に墓場ですね

<strong><span class="fz-16px">男</span></strong>

墓石が並ぶだけのですか

<strong><span class="fz-16px">謎の男</span></strong>
謎の男

殺伐と墓石が並ぶだけの純粋な墓場です

<strong><span class="fz-16px">男</span></strong>

・・・墓場にはお骨くらいしかありませんよ

<strong><span class="fz-16px">謎の男</span></strong>
謎の男

高性能集音マイクがお骨のありがたい言葉を集めてくれるのです

<strong><span class="fz-16px">男</span></strong>

・・・お骨が喋るんですか

<strong><span class="fz-16px">謎の男</span></strong>
謎の男

喋るというか音波というか念波というか

<strong><span class="fz-16px">男</span></strong>

・・・どういう内容なんですか

<strong><span class="fz-16px">謎の男</span></strong>
謎の男

3割が「天・神・祭・再・魂・不・夢・権・周」について

4割がerm=sc×351-∞awq・・・

<strong><span class="fz-16px">男</span></strong>

もう大丈夫です!

人智を超えた領域は私の理解範囲を超えます

<strong><span class="fz-16px">謎の男</span></strong>
謎の男

さて、実はここで一つ発表があります

何とこのレコーダーは実は通常モデルではなく最新型の有機ELモデルなのです

<strong><span class="fz-16px">男</span></strong>

どこぞやのゲーム機の様な仕様ですね

<strong><span class="fz-16px">謎の男</span></strong>
謎の男

そしてこのモデルには新機能として「会話の実体化」の機能が実装されているのです

<strong><span class="fz-16px">男</span></strong>

実体化?

<strong><span class="fz-16px">謎の男</span></strong>
謎の男

ええ会話を総合して平均化したデータのイメージを実体化するのです

<strong><span class="fz-16px">男</span></strong>

ちょっと意味を掴みかねます

<strong><span class="fz-16px">謎の男</span></strong>
謎の男

まあ百聞は一見に如かずです

先ほどの喫茶店の会話データを実体化します

ポチッとな

ズドーン

<strong><span class="fz-16px">男</span></strong>

ああっ、目の前にピンク色の巨大ロボが現れた!

<strong><span class="fz-16px">謎の男</span></strong>
謎の男

これぞ「神聖機パパンゲリオン」です

<strong><span class="fz-16px">男</span></strong>

全身ピンクの体の胴体部分には神の巨大な顔が付いている

そして手足のあらゆるところに有名ブランドのロゴが記載されている・・・

<strong><span class="fz-16px">謎の男</span></strong>
謎の男

ついでですし刑務所の会話データも実体化しちゃいましょう

ポチッとな

ズドーン

<strong><span class="fz-16px">男</span></strong>

白と黒のボーダーのボディーのロボだ!

背後に仏像が背負っている「光背」を羽のように背負っている

よく見ると手が千手観音のように沢山あるし、ロボの頭部には螺髪が並んでいる・・・

<strong><span class="fz-16px">謎の男</span></strong>
謎の男

「刑務戦士ヴェーダ・カムタル」です

<strong><span class="fz-16px">男</span></strong>

名称のもじりがひどい

<strong><span class="fz-16px">謎の男</span></strong>
謎の男

さあ争うがよい、二体の会話の化身よ!

キン・キン・バシッ・ズバババ

<strong><span class="fz-16px">男</span></strong>

凄まじい戦いだ

<strong><span class="fz-16px">謎の男</span></strong>
謎の男

今のところ互角ですね

<strong><span class="fz-16px">男</span></strong>

白と黒の受刑者服仕様の千手観音の手のパンチを、ブランドのロゴをまとうピンクの手足が防いでいる・・・

<strong><span class="fz-16px">謎の男</span></strong>
謎の男

ポチッ

・・・あっ

<strong><span class="fz-16px">男</span></strong>

どうしました

<strong><span class="fz-16px">謎の男</span></strong>
謎の男

間違えて殿堂入りの「墓場」の会話の実体化ボタンを押してしまいました

スウウウウウウウ

<strong><span class="fz-16px">男</span></strong>

何だこれは黒いロボ・・・

いやロボじゃない

漆黒の闇が広がっていく

<strong><span class="fz-16px">謎の男</span></strong>
謎の男

凝縮されたブラックホールのようですね

<strong><span class="fz-16px">男</span></strong>

ああっ、パパンゲリオンの腕がロゴごと闇に吞み込まれていく

<strong><span class="fz-16px">謎の男</span></strong>
謎の男

何とヴェーダ・カムタルの螺髪が引っ張られてストレートになっています

そしてそのまま頭部ごと闇に呑まれていきます

シューーーーー

パンッ!!

<strong><span class="fz-16px">男</span></strong>

・・・・・

<strong><span class="fz-16px">謎の男</span></strong>
謎の男

・・・完全に消えてしまいましたね

<strong><span class="fz-16px">男</span></strong>

・・・そうですね

町は先ほどの暗闇が嘘のようにいつもの景色を取り戻した。

その街角で二人の男はなぜか握手をし、そしてそのまま別れた。

お互いなぜ握手をしたのかは、自分でも理解出来なかったが、二人の胸の内はとても穏やかだったという。

<完>

何だかよくわからないモノを目指し、ブログやってます
本の書評や考察・日々感じたこと・ショートストーリーを書いてるので、良かったら見て下さい♪

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