何だかよく分からない、不条理な会話劇。
それが「かえる劇場」です。
気楽に見て下さい。
前年比
さて、今日の授業はこれで終了です
・・・・・・
みんな驚いていますね
そうでしょう、なんと残り30分も残しています
ざわざわ・・・
がやがや・・・
今日は皆さんに先生から発表があります
すごい一生懸命まとめてきたので、皆さんも真剣に聞いてくれると嬉しいです
・・・・・
私がこのクラスを担当して2か月が経ちました
そしてここで一つの結論を出しました
黒板に注目!
あなたたちの前年比
75%
・・・・・
ご存じの通り、去年も先生は2年生の担任でした
ざわざわ・・・
がやがや・・・
そして良くも悪くも、去年のクラスはとてもパーセンテージが高いクラスでした
逆に今のクラスは、去年のクラスの子たちと比べると、とてもパーセンテージが低いです
まずこれです
通知表の平均
去年4.8→今年3.5
去年は非常に賢かったのです
それに比べ、あなたたちはなんて中途半端!!
せめてオール2とかなら、逆にアリですが一番つまらない数値です
・・・・・
続いての数値はこちら
黒板に注目
喫煙率
去年95%→今年22%
援助交際経験率
去年100%→今年10%
そうです去年は勉強も出来ましたが、法も犯すタイプの生徒たちだったのです
続いてこれです
地域のボランティア参加率
去年100%→今年33パーセント
ざわざわ・・・
ひそひそ・・・
誰だ去年のクラスがサイコパスだと言ったのは
情緒不安定という声も聞こえたぞ
・・・・・
とにかく分かる通り、去年はめちゃくちゃパーセンテージが高いクラスだったのです
あなたたちは数学的に完全負けているのです
世の中に出たら大事なのは数字です
あなたちは総合して前年比75%です
ぺちゃくちゃ
なるほど、そういうお前の前年比はどうなんだと
確かに最もな指摘です
では黒板を注目
白髪率130%増
顔面のシワ150%増
どうです
私は前年を大きく超えた存在です
わかりましたか?
・・・・・
前年から大きく数字を落としたあなたたちは本来なら負け組です
しかし、私も教師のはしくれ
あなたたたちを見捨てません!!
それではまず出席番号1番、有沢さん
あなたは放課後、歌舞伎町に行って遊びまわっていますね
と
有沢さん
・・・・・
非常に生ぬるいです
あなたは今日から歌舞伎町に住んでください
最悪、学校に来なくてもかまいません
酒やらなにやらに全力で溺れましょう
これであなたの、非行少女率は250%を軽く超えます
・・・・・
続いて14番、西沢くん
あなたは、英会話をやっているようですね
と
西沢くん
・・・・・
そのほかにドイツ語、中国語、フランス語あらゆる言語を習いましょう
そののちにすべての言語を混ぜて新しい言語を作ってください
他の生徒から不思議ちゃんに思われるかもですが我慢しましょう
これで、国際交際能力は300%超えです
・・・・・
そして20番、羽下くん
君はTVゲームが趣味だそうですね
と
羽下くん
・・・・・
あなたの家にTVとゲーム機を追加で20台送りました
それを繋いで20台同時にゲームをやってください
おそらく20台ゲームを同時にやることが、TVゲームよりもゲームですから
あなたのゲーム脳は前年比400%超えは間違いないでしょう
・・・・・
そして28番、村山くん
君は女性をとっかえひっかえしているそうですね
と
村山くん
ざわざわ・・・
ひそひそ・・・
私が閉演した動物園の土地を買い占めて
そこにゾウのメス、キリンのメス、カメレオンのメスなど
メスしかいない動物園を作りました
あなたはそこに住み込みで、動物と寝食を共にしてください
学校には二度と来ないでOKです
これであなたの愛情は前年比500%を超えます
ざわざわ・・・
ひそひそ・・・
ぺちゃくちゃ
ふー、ダメですか
ここまで説明しても私の気持ちが分かってくれないみたいですね
仕方ありません
入ってきてください
前年比
120%
てくてく
ここにいるのは私が国立科学研究所に作らせた
あなたたちの前年比120%コピーです
もし私の指示に従うのが嫌なら、ここで存在を入れ替わってください
戸籍も名前も全てを失いますが、それでも・・・・
あれ?
シュッ
・・・・・・
何で私を囲むように円になってるんですか
しかもコピーの子たちまで・・・
ぐるぐるぐる
なぜ手をつなぎながら、回るのです・・・
やめてくれ頭がおかしくなりそうだ・・・
ぐるぐるぐるぐるぐる
ああ回っている生徒たちが黒い蛇の環の様に見える
いや暗闇か、ああ!!吸い込まれる!!!
気付くと私は暗闇の中を落ちていた
そして落ちていく中で、色んな映像が映し出されている
あれは、私と同じ顔だ
15世紀のフランスか、農作業をしている
ああ、あれも私と同じ顔だ
12世紀だろうか、平家に仕えていたのか
・・・・・あらゆる時代に私がいる
存在は繋がっているのか
・・・・・
・・・・・
そうか
すべては繋がっていて、滅びも豊かさも、存在も繰り返す環なのだ
そしてしばらく落ちると、グレーの地面に着地した。
そしてそこには1から9の数字が、モニュメントの様に立っている
なんだここは、そして数字のモニュメント・・・
あっ、モニュメントが溶けていくドロドロだ
そしてそれが液体になって環の様に流れていく・・・
ああ、私の体も溶けていく
そうか私も環の中に帰るのか
なんだろう不思議と心地よい感じだ・・・
ああ・・・意識が・・・消える・・
・・・・・
・・・・・
・・・・・
気が付くと私は、30年前初めて教師になり赴任した学校の校門の前に立っていた。
私はゆっくりと校門の中に入り、教師生活のリスタートを切った。
<完>