<雑記>かっぱ巻きの罪と罰

雑記

私はよくランチで利用するお寿司屋さんがある。

そこでは握りにプラスで巻物が付いており「かんぴょう巻き」「かっぱ巻き」「納豆巻き」から一つ選ぶシステムになっている。

その際、私は100パーセントの確率で納豆巻きを選ぶ。むしろそれ以外の巻物に関しては眼中にないとさえ言っていい。

その理由はそのラインナップの他のメンツ、特にかっぱ巻きに対し、長年不審を抱いているという事に尽きるのだ。

さてここから私はなぜ、納豆巻きしか選ばないのか、そしてかっぱ巻きに対して何を思っているのかという本質、核心的な理由に迫っていくことになる。

しかしその理由に関しては100パーセント、歪んだ主観と認知の産物であり、あくまで個人的な一方的な意見で、科学的道徳的知見が皆無であることをここに明記しておく。

さて、タイトルのかっぱ巻きである。

私はかの存在の事が未だ理解出来ないでいる。

そもそも寿司屋とは、基本的に魚肉を食すところだ。

しかしきゅうりは野菜である。ゆえに最初の段階で既に違和感はある。

とはいえ野菜でいうなら「新香巻き」などもあるから、そんなに目くじらを立てる必要はないのではという意見もまあ分かる。

しかしお新香には基本的にそれ自体にしっかり味がついている。そもそもお新香自体が美味しい、ここがまず、巻物としての加点ポイント1だ。

次にかっぱ巻きの本質を見つめ直す為、比較対象として「かんぴょう巻き」を取り上げる。

私は正直な話、かんぴょう巻きに関しても甘すぎるので、あまり好きではないが、しかしそれでもまだ、かっぱ巻きよりは充分理解出来る。

基本的にかんぴょうというものを手短に食べたい場合、まず一番に浮かぶものがかんぴょう巻きだ。ゆえに素材のプライオリティに関して加点ポイント1だし、そして中のかんぴょうにもしっかり味が付いている。

さていよいよ本丸のかっぱ巻きだ。

中にあるのは、何の下味もついていない、ただのきゅうりである。

そしてかんぴょう巻きや新香巻きに関しては、酢飯とのハーモニーがそこはかとなく感じられる。料理とは組み合わせによる相乗効果だ。

しかしきゅうりに関しては、酢飯とは、俄然ノーハーモニーであり、そこに音は無く、無常な静寂だけが広がっているだけだ。

ここで誤解無きように言っておくが、私はきゅうりに関しては大好きである。

しかしきゅうりの美味しい食べ方は、味噌につけて丸かじり及び、浅漬けであり、断じて酢飯にインでは無い。

さてかっぱ巻きには、素材以外にも重要な問題を抱えている。

それはその名称である。

かっぱ巻き。

河童・・・

なぜ巻物に過ぎない分際で、君は文化人類学のスターの名を冠しているのだね。

↓ここで河童の一般知識

そう河童は妖怪界の三大スターの一角なのだ。

それの大好物がきゅうりであることはいいだろう。

しかしかっぱ巻きに巻かれているのはきゅうりであって、断じて河童が巻かれているわけではない。

そもそもコロ助が好きなのがコロッケであり、ドラえもんが好きなのがどら焼きだ。

それなのに、まるで自らが河童を象徴し、むしろ主体であるかのように振る舞っている時点で、その罪の重さは自明の理である。

私は日常の中でついつい想像してしまう。

例えば、友達のお父さんが寿司屋に連れていってくれる、もしくは寿司を取ってくれるとする。

そのお父さんは眼鏡が似合っており、どこかしら知的な雰囲気が漂う、魅力あふるるダンディーパパだ。

しかしそのダンパが、もし寿司屋でかっぱ巻きしか頼まなかったり、取った寿司がかっぱ巻きのみだったら、私はその眼鏡をぶち壊し、メリケンサックを巻いた、握りこぶしで、かっぱ巻きを食べている顎にアッパーを繰り出すことになるだろう。

もしフランスの社交界の華である、キュリー伯爵のパーティーに参加して、ローストビーフやキッシュが並ぶ中、日本コーナーらしき場所に、立派な寿司桶にかっぱ巻きだけが並べられていたとする。

そうなった場合は、不敵な笑みを浮かべ、キュリー伯爵に近づき、その凛々しい顔に唾を吐きかけ、その白い髭を掴んだまま、シャンゼリゼ通りを見せしめの如く引きずり回すことになるだろう。

もちろん私だってこんな荒事に手を染めたくはない。しかしこれは世直しであり、しいては巻物界の未来の為なのだ。

さて、無事にかっぱ巻きに対する罪の見せしめを終え、私はシャンゼリゼ通りにある、自分のアパルトメントの二階に戻る。

途中にあるパリジャン御用達のスーパーで私は納豆巻きを買っている。

鍵を使いドアを開き、部屋に入る。

すると玄関に見なれない、緑の靴があることに気づく。

ウリのような巨大キュウリをくり抜いた靴が揃えてきれいに置かれている。

リビングに入ると、古い丸机に、肌つやがいい河童が座っている。

河童「よう、あんさん。最近随分派手にやってるみたいやないか」

私「・・・・・・」

河童「ほう納豆巻きか、上手いよな」

私「・・・・・・」

河童「すると醤油が必要やな。しかしこの部屋には醤油は無い。どないしたもんかいな」

そう言うと河童はさっと銃を取り出し、私の腹部を撃ち抜く。

河童「ちょっと、醤油多すぎたみたいやな」

私の死体は河童に黒い布で巻かれセーヌ川に沈められる。

私はようやく理解する。

きゅうりだからではない。

河童が巻くから、かっぱ巻きなのだと。

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