<書評>「堕天使拷問刑」 これこそオカルティックエンタメ

書評

「堕天使拷問刑」は作家の飛鳥部勝則さんが2008年に早川書房から刊行した作品です。

本作はミステリー好きからカルト的な人気を誇り、中古価格も高騰して手に入りにくい状況が続いていたらしいのですが、書泉・芳林堂書店さんの熱意により限定で復刊。

本作を皮切りに続々と、書泉・芳林堂書店さんが飛鳥部さんの作品を続々限定復刊していることから、早川書房がその勢いを受け、2025年に文庫化したらしく、私はその文庫版を購入しました。

その日、私はららぽーと横浜で、税込1099円の格安ビュッフェでたらふく、唐揚げを腹に詰め込んだ後、施設内の書店を徘徊していました。

そこで目に入ってきたのが、暗黒色の仰々しい熱意あるポップに囲まれ異様な存在感を放つ本作。

表紙のデザインと異様なほど分厚い厚み、かつオカルト中二パワー全開のタイトルに惹かれ、私は裏面のあらすじに目を通しました。

すると「魔術崇拝者の祖父の変死」やら「ある一族の女三人の斬首」やら「月へ行きたいと呟く謎の死少女」やらの言葉が並び、私のオカルティックパワーは刺激されまくり。

「何か怪奇チックなメガテンの様な感じだな」

そう思い、直観でばっと手に取り購入したわけです。

さて、京極夏彦作品ばりの分厚さを誇る本作を読了した感想ですが、非常に読みやすくエンタメ性が高い、面白い作品でした。

あとがきで飛鳥部さんのことを現代変格ミステリの代表格と紹介されているように、話は摩訶不思議マシマシ、村の因習や、ホラー要素、美少女やキリスト教からの引用などなどをバロックのように積み上げ、どーんと出してきたような愉快な内容。

推理小説に公平性や理屈が通っているか、フェアさを求める人は戸惑うかもしれませんが、私はミステリーでもSFでも話の面白さや展開の大胆さを重視している人間なので、全然オッケー。むしろ非常に好みでした。

カルト的作品で言うと、夢野久作さんの「ドグラ・マグラ」やバタイユさんの「眼球譚」を思い浮かべ、読みにくかったり難解だったりするのでは?

そう思う人がいると思いますが、文体も特にクセもなく、読み進めていけば、全員が分かり、何かを解釈しないと意味が分からないという事も無いので、そこは安心だと思います。

途中で、あるジャンルに対する網羅的紹介の様な内容が挟まれますが、純粋に参考になるし、そこをパラパラ読みで飛ばしても物語に影響はありません←ドグラ・マグラのスカラカやチャコポコに比べれば全然余裕だ

個人的な趣向として堕天使などキリスト教の要素がもう少しゴリゴリに絡んできてほしかったなあとも思いますが、最後まで読むと、しっかり仕掛けに驚かされますし、人間の貧富から出てくる業や、猟奇的な人間性も描いており、本書を手に取った人の願望に着実に答えてくれる作品だと思います。

今年の夏(9月だけどまだ夏でいいだろう暑いのだから)、分厚いホラーミステリー片手に優雅な読書時間を楽しんでみてはいかがでしょうか←お前誰だよ

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